年間2億食販売の“マルちゃんショック”
この8月10日、東洋水産は「マルちゃん正麺」をリニューアルした。2011年、新発売以来、約4年が経過し、売り上げも順調ななかでの進化だ。経験値も含め、技術が向上したことにより、厚みのあるしっかりとした麺になったことで、より生麺に近づいた。さらに、のびにくくなったこともポイントで、価格は現在のまま据え置かれるという。
日本人の国民食とまでいわれるインスタントラーメン。それもそのはず、2014年度の市場規模は54億927万食(日本即席食品工業協会調べ)だ。このうち、カップ麺が35億1030万食で、全体の64.9%。17億1678万食、31.7%の袋麺を大きく引き離している。袋麺は1972年の37億食をピークに低落傾向が続いていた。2010年には過去最低の16億8000万食に落ち込んでいたが、11年は上昇に転じている。
その起爆剤となったのが「マルちゃん正麺」である。東洋水産が、およそ5年の歳月をかけて開発し、11年秋に発売。わずか1年で当初目標の2倍となる2億食を突破。スーパーなどの店頭では、品薄状態が続いた。翌年には3億食を大きく超えたことから、業界関係者は、これを“マルちゃんショック”と呼ぶ。それだけ袋麺市場を活性化させたということだ。
この大ヒットの要因を、早稲田大学社会科学総合学術院の野口智雄教授は「いわゆる麺を油で揚げないノンフライ麺というジャンルに入るが、製造時に蒸してもおらず、切り出した麺をそのまま乾燥させて、美味しさを閉じ込め、生麺に近い風味を出した。このイノベーションを起こしたことが最大の理由。加えて、時宜も得ていた。東日本大震災で非常食を蓄える重要性が指摘されるとともに、景気減速は食のトレンドを内食に向けた。その間、日本人のなかにずっとグルメ志向があったことも大きい」と説明する。
当然ながら他社も、東洋水産の成功体験に追随しようということで、同様の商品が相次いで登場してくる。日清食品の「ラ王」、サンヨー食品の「頂」といったライバル商品が、「マルちゃん正麺」と並んでスーパーの陳列棚を飾った。これらの特徴は、生麺のようなコシと味を実現したところにある。それまでインスタントラーメンは小腹のすいたときにスナック感覚で食べられていた。しかし「マルちゃん正麺」は、ゆで卵やチャーシューのような具材を添えて食卓に置けば、1回分の食事としても見劣りがしない。