どうやって逃げる上司を追いつめたか

優しい上司が組織に実害を与えた例を挙げよう。マシュー(仮名)は、しゃにむに優しくしようとする上司、ブライアン(仮名)の下で1年弱働いた。ブライアンは彼らが勤めていたクレジットカード処理会社で52人のチームを管理する立場にあり、対立を避けていた。「約束した資源の要求をしないとか、不当な苦情を受け入れるといったことがしょっちゅうあった」。

マシューはチームを代表して、彼の行動が離職の原因になっていることを具体例を挙げて伝えた。「それに対して彼が言ったことはすべて立派なことだった。だが、彼の行動はそうではなかった」と、マシューは言う。

直接的な話し合いが失敗に終わったあと、マシューはブライアンの頭越しに行動した。「最終的には彼の上の人たちから必要なものをもらったよ」。その後、マシューは昇進し、新しい立場でブライアンにもっと資源をくれと頼んだ。要求がかなえられなかったとき、彼はブライアンの上司である会社の最高情報責任者のところに行った。

「私の要求はどうなっているのかと質問して、わかったんだ。彼がその要求のことを知らなかったということがね」と、彼は語る。マシューはブライアンの頭越しに要求するのは気が進まなかったが、必要だと感じた。

ブライアンの行動がどれほど有害かはまもなく明白になった。「3カ月の間に4人のシニア・エンジニアと2人のマネジャーが辞めたんだ」。結局、ブライアンは解雇され、マシューと彼の同僚の1人が昇進して、ブライアンの職務を共同で担当することになった。「辞めた人のほとんどが戻ってきて、わが社の文化はよいほうに劇的に変わったよ」と、彼は語っている。

(ディプロマット=翻訳 Getty Images=写真)
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