プラス思考で仕事に取り組め

2点目のプラス思考もビジネスマンには不可欠の条件だ。石油業界で半世紀近く働いてきたが「この状況なら安心、何ら手を打たなくても収益は上がるだろう」という経営環境になったことは1度もない。オイルショック時には、原油価格が暴騰し、ガソリン価格も上がった。安定供給確保という社会的責任を問われる大変な時期でもあった。1990年のイラクによるクウェート侵攻も中東産原油に依存する日本経済を揺さぶり、度重なる規制緩和にも業界は翻弄された。

こうしたとき人間というものは、どうしてもうつむき加減になってしまう。だが、そんな風潮が社内にはびこると、すべてがうまく回らなくなる。そのような行き詰った状況を打開するのがプラス思考なのである。先の人材ビジョンには「外向き志向」というキーワードもあるが、逆風の際には業界の垣根を越え、チャンスを掴んでいこうとの気構えは絶対に必要だ。

人間の思考というのは、その人が本来持っている考え方の"クセ"のようなものだ。重要な仕事を任せようとする場面を想定すると、それがよくわかる。マイナス思考の社員は、いつも「No、because」と否定から入り、その理由を述べる。反対に、プラス思考の人なら「Yes、on-condition」と、条件つきながら前向きな受け止め方をする。いうまでもなく、ビジネスでは常に後者であってほしい。

2014年7月のことだが、当社は12年ぶりに新ハイオクガソリン「Shell V-Power」を発売した。実は、この世界的なブランドを導入するまでに6、7年もかかっている。理由がまさにマイナス思考だった。現在の国内ハイオク市場は縮小傾向だから差別化製品の投入効果は薄いということに加え、流通体制が不十分で全国展開するにはコストがかかり過ぎるというのである。ところが、ふたを開けてみれば、ユーザーの皆様から支持をされ、当社国内ハイオクガソリン販売量の約97%をカバーし、流通コストの増加を上回る成果を得ている。マイナス思考を抑え、プラス思考で取り組んだ成果といっていい。

国木田独歩の言葉に「人間は過去の習慣の奴隷なるかな」という言葉がある。人が長い間の習慣に支配されるということだ。マイナス思考の人は、過去の失敗を引きずって、何をやってもうまくいくはずはないと怯んでしまう。しかし、習慣なら変えることができるはずだ。難しい問題が起きたとしても、すべては自分を成長させるための試練だととらえ、プラス思考に転換していけばいい。何度でも繰り返すことで、それが習慣化されていくのである。

(岡村繁雄=構成)
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