家事は苦手だけど、とにかく夫と一緒にいたかった

そして退院後は抗がん剤などの治療を開始し、免疫力を高める生活を始めたのです。そのためには、なんといっても食事が重要です。そこで、私は慣れない料理に挑みました。『がんに効く生活』という本を読み、ターメリック(うこん)は抗炎症作用が高いと知ると、ひじきの煮つけだろうが、切り干し大根の煮物だろうが、構わずかけまくる。これがマズかったのでしょうね。そのうち夫が、「今日はひじきが嫌いになった」「切り干し大根が嫌いになった」と言い出すようになりました。それでも、私が慣れない料理を頑張って作っているのがわかるから、頑張って食べてはくれます。でも、大変な手術で痩せた体が、さらにどんどん痩せていってしまいました。頑張ったんですけど逆に迷惑だったみたいで、最後には「もう勘弁してくれよ」と言われてしまいました(笑)。

結局、お手伝いさんを見つけて、例の本を読んでいただき、私の監督のもとに、料理してもらうことになりましたが、どうやら夫はそのほうが満足なようです。

このように、私は闘病中も相変わらず家事が苦手で、役立たずでした。でも、とにかく夫と一緒にいたかった。だから術後の療養の間には、一緒にいろんなことをしましたね。

免疫力を高めるうえで、精神状態をよくすることが重要です。それに、体を動かすこと、リラックスすることも大切。ですから、空気のいい地域に引っ越して、一緒にウオーキングをしたり、教室に通って陶芸を始めたり、音楽を聴きにいったり、整体に通ったり、ミニゴルフに行ったり、はたまた瞑想をしたり。がんに「マイナスにならない」ことは何でもしました。

それに、楽しい話をいっぱいしました。話のネタですか? 多くは飼い犬「さくら」の話でしょうか。さくらがすぐ隣にいるのに、2人して、さくらの写真を広げて、「よく写ってるね」なんて笑ったり。また、自然に関する話題が増えましたね。一緒に散歩に行って、富士山を見たり、月を見たり、新緑の季節には「緑が出てきたね」、春になると「桜が咲いたね」なんて話をしたり。それに、お互い、先祖への感謝の気持ちが芽生えて、散歩の途中で「あっちが富山、お爺ちゃんのお墓の方向だ」なんて言って、一緒に手を合わせたりもしました。

ごはんもゆっくりと食べました。50~70回噛んで飲み込む。こんなにゆっくり食べたこと、それまでありませんでしたよ。