成功に導くリーダーのタイプとは?

古いアメリカの心理学者クルト・レヴィンらによる実験で、「専制的リーダー」、「民主的リーダー」「放任的リーダー」の3タイプを設定し、10歳の少年たちを決まった条件下でグループ分けして様子や作業量に及ぼす影響を研究したものがある。「専制型」のグループのメンバーは不満を感じ、けんか腰になったり冷淡で無関心になったりする傾向がみられ、「民主型」ではメンバー同士がわりと協力しあうなど楽しんで作業をし、「放任型」のグループは特に不満も示さなかったが、生産的でもなかったという結果になった。

実は、それぞれのリーダーに本来と違うスタイルを取るよう依頼した場合でも、各リーダーシップスタイルの効果は似通っていたそうだ。まとめると次のようなる。

●「専制的リーダー」:作業量<大> 作業意欲<低>

活動方針はリーダーが決める(ヴィジョンを示す)。リーダーが指示を出していく。メンバー同士はけんか腰、無関心などの態度がみられる。

●「民主的リーダー」:作業量<大> 作業意欲<高>

活動方針はみんなの意見を尊重して決定し、メンバーを激励していく。メンバー同士が協力的で楽しんで作業を行う。

●「放任的リーダー」:作業量<小> 作業意欲<低>

基本的にメンバーの意志に任せ、あまり口は出さない。メンバーは不満も示さない代わり、生産的でもない。

また、EQ理論で知られる心理学者ダニエル・ゴールマン氏は、強圧型や関係性重視型、民主主義型、ペースセッター型、コーチ型、ヴィジョン型など異なる6種類のリーダーシップスタイルをそれぞれ組み合わせることで最善の結果を作りあげるとしている。その一面で、ヴィジョン型リーダーを理想的なリーダーだとの見解も示していた。

上司が一方的にヴィジョンを提示するのではなく、部下と上司がヴィジョンを共有し、チーム全体が共通の夢を持つことが大切だというのだ。たとえばチーム全体が「今度こんな企画で成功を収めたい」といった同じ夢をもっているときに、それぞれが自分で考えるようにもなり、上司の話に素直に耳を傾けることで、部全体の雰囲気も良くなるという。

リーダーシップは「オレについてくれば大丈夫」「俺が引っ張っていく」というのが固定的な考えとされてきた。けれども、より効果をもたらすリーダーは、全員で目標を共有し、その目標にむかって頑張るように部員の心理を考え、そのヴィジョンが本当に現実的なものかを検証することも大切にすべきなのだ。

長きにわたって好調な組織は、ただ一人の力に頼らず、皆で同じヴィジョンや目標を持って力をあわせ、共通の夢に向かって進んでいる。各人の感情や知覚を大切にしながらまとめあげる姿勢が、人を統率するときに効果をあげるのだ。

[脚注・参考資料]
TED サイモン シネック「なぜ優れたリーダーの元では安心を感じられるのか?」Filmed Mar.2014
https://www.ted.com/talks/simon_sinek_why_good_leaders_make_you_feel_safe?

ダニエル・ゴールマン(2002)『EQリーダーシップ 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方』講談社

Kurt Lewin. Lippit, R. and White, R.K.(1939). Patterns of aggressive behavior in experimentally created social climates. Journal of Social Psychology,

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