教え子が世代を越えてつながる

【窪田】私もその一人ですけど、先生は教え子が卒業してからも付き合いがありますよね。

【川端】ええ。大学に入ってからも年に1度は顔を見せてくれたり連絡をくれたりしますよ。成人式の後に「先生、成人したの!」って言いに来てくれた子もいたし、この間も就職が決まったとか、大学院に受かったとかで、報告に来てくれた子がいました。「結婚するとき報告に来ます」とか言う子もいますが、「それは必要ありません」と冗談めかした返答をしています。

実は最近、私の教え子だった子がシアトルで窪田君の講演を聞いたって報告に来てくれたんです。私のところに小学5年生の時から6年間学びにきていたI君っていう子。とても優秀な子でサッカーもよく出来たんです。ところが、彼もユニークな子で、なかなか先生の言うことを聞けない子だったんですよ。だから高校に入学する時に重々言ってたの。「あなたは個性的でいいのだけれども、それで失敗することもあるし気をつけないとダメよ」って。なのにサッカーの名門校に入ってサッカー選手としていいところまでいけたのに案の定。理由を聞いたら頭を坊主にしたくなかったからだって言うわけ。あと1年我慢すればよかっただけなのに。

【窪田】彼のその気持ちはわかりますね。私も坊主にしたくなかったから親が決めた中学ではなく自分で探した学校に入学の交渉をしましたからね。強制されるのがいやだったんですよね。何カ月かしたら引っ越すことがわかってたから、転校先の中学校を自分で探して神戸市から通わせてもらうことにしたんです。将来こっちに引っ越しますからって。

【川端】彼も頑として自分の意見を通す子だったんですよ。先生とも対等にやりあうくらい。折れるところは折れて、少し辛抱しなさいって言ったのに。彼からはしばらく連絡がこなったんですけど、大学を休学してワシントン大学に留学していることを娘からのメールで知ったんです。去年、窪田君がワシントン大学で講演した時に、I君が挨拶に来たでしょう?

【窪田】あ、あの彼がそうなんですね。僕も川端先生に教えてもらってましたって講演会の後に挨拶にきてくれた学生さんがいました。私はニュージャージーで教えてもらいましたけど、彼は日本で先生に教えてもらっていたんですよね。本当に奇遇でした。

【川端】彼は留学中、シアトルにあるUWAJIMAYAっていう本屋さんでたまたま窪田君の本、『極めるひとほどあきっぽい』を見つけて何気なく買っていたんですって。そうしたらニュージャージーでのエピソードに私と同姓同名の名前が出てきてびっくりしたって。

【窪田】あれ以来、I君とはfacebookでつながっていますが、ワシントン大学というより川端先生がきっかけなんですよね。まさか川端先生の教え子にこういう形でお会いするとは思ってもいなかったので驚きでしたよ。

【川端】その本のことや講演会のことがI君からのメールに書いてあったって彼のお母様から電話があったの。シアトルにいる私の娘からも同じ頃に連絡がありました。娘も窪田君の講演を聞きに行っていたんだけど、彼女のほうはI君のことを知らなかったのですが、彼のほうが彼女の顔を覚えていたらしく、もしかしたら私の娘じゃないかって声をかけてくれたそうなの。娘もI君がワシントン大学に留学していることに驚いてました。その時に娘から、『極める人ほどあきっぽい』に登場する「川端」が私であることを聞いて、彼は二度びっくりしたそうです。

【窪田】いやぁ、驚きの連鎖ですね。世間は本当に狭いです。講演会で先生の娘さんにもお会いしましたよ。

【川端】そのI君が今年の9月に留学を終えて帰って来てすぐに、彼と彼のお母様と3人でランチをしたんです。その時も窪田君の話をしていましたよ。講演のお話は面白いしわかりやすいし、僭越ながら人柄もよさそうで感激したって言ってました。

【窪田】そんな風に言ってくれていたんですね。ありがたいです。