奈良雅弘氏が分析・解説

永守氏は、認識・関係などの観点からとらえることも可能だが、やはりそのユニークな人格を離れて語ることは難しく、「人格アプローチ」として考察してみたい。

永守氏の魅力の一つは「大法螺」に代表されるように、平易かつイメージ豊かな言葉を使いこなす名人だということである。法螺とはウソのことではない。ウソは密室の中でコソコソ言ったりする性質のものだが、法螺は野外で高らかと「吹く」ものであり、周囲にいる同志連中を集合させる合図であったりする。例えば、「ビジョン」といったスマートな言葉では絶対に表現できない、独自のニュアンスを伝えているのである。

また圧倒的なエネルギーを持ちながら、一方で自分を「大法螺吹き」と言ってみたり、「できもしないことを言っている」という社員の陰口を代弁してみたり、自分を冷静に突き放して見る視線を持っている点も魅力的だ。こうした、人間味あふれる言葉を持ち、圧倒的な前向きさと、冷静な内省の目を持っている人物とならば、人はおそらく、自ら進んで心地よく束ねられ、一緒に歩みたくなるのではあるまいか。

もちろん、道中の修羅場で、その人がどこまで勇敢に最後まで戦うリーダーであるかを見定めながらの話であるに決まっているのだが。

アール・アンド・イー合同会社代表 奈良雅弘 
1959年生まれ。東京大学文学部卒業。人材育成に関する理論構築と教育コンテンツ開発が専門。著書に『日経TEST公式ワークブック』(日本経済新聞社との共編、日経BP)がある。
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