無我夢中の中にこそ人生の充実がある

「光と影。それが、40年間建築の世界で生きてきて、その体験から学んだ私なりの人生観である」という言葉が、深く心に刻み込まれるのが『建築家 安藤忠雄』。この言葉の前文では「私は、人間にとって本当の幸せは、光の下にいることではないと思う。その光を遠く見据えて、それに向かって懸命に走っている、無我夢中の時間の中にこそ、人生の充実があると思う」としている。

安藤忠雄といえば、独学で建築を学んだことで有名だ。家庭の経済事情もあり、大学の建築学科で学ぶという当たり前の道を選ばなかった。だからこそ、実際に建築の道を歩み始めると、絶望を感じるほどの苦難の連続だった。保守的で閉鎖的な日本社会の中で何の後ろ盾もなく、何か仕掛けてもたいていは失敗に終わった。もがき続け、無我夢中でやってきた歴史があって、そこからトップにまで上り詰めたからこそ、その言葉の一つ一つに重みがある。

絶望の中の希望――。そうした建築家の精神が伝わってくるとともに、生きる姿勢を学ぶことができる。また、彼の仕事への取り組み姿勢が、建築物を紹介しつつ詳らかにされるので、「こういう考え方で作ってきたんだ」という驚きを得られるのも本書の魅力だ。

土井英司氏お勧めベスト10

1. 『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙
   キングスレイ・ウォード 著/城山三郎 訳/新潮社
2. 『人生の短さについて』
   セネカ 著/茂手木元蔵 訳/岩波書店

3. 『株で富を築くバフェットの法則 最新版』
   ロバート・G・ハグストローム 著/小野一郎 訳/ダイヤモンド社
4. 『自分の中に毒を持て』
   岡本太郎 著/青春出版社
5. 『建築家 安藤忠雄』
   安藤忠雄 著/新潮社
6. 『魂の錬金術』
   エリック・ホッファー 著/中本義彦 訳/作品社
7. 『それでもなお、人を愛しなさい』
   ケント・M・キース 著/大内 博 訳/早川書房
8. 『希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話』
   ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ、フランツ・カフカ 著/頭木弘樹 編訳/飛鳥新社
9. 『遠回りがいちばん遠くまで行ける』
   有川真由美 著/幻冬舎
10. 『日本人にしかできない「気づかい」の習慣』
   上田比呂志 著/クロスメディア・パブリッシング

マークは2014年に刊行されたものです。マークは絶版本ですが、ネットで購入可能(2014年4月15日現在)]

出版マーケティングコンサルタント、エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役 
土井英司

多数の著者のブランディング、プロデュースをしており、『人生がときめく片づけの魔法』は100万部突破。ビジネス書評家でもあり、日刊書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」編集長。
(小澤啓司=構成 市瀬真以=撮影)
【関連記事】
成功者の金言・格言「お金はどう使うべきか」
ファーストクラスに乗る人が機上で読む本リスト
ビジネスマンの必須科目は「心の整え方」
ノウハウ本はもういらない!? ビジネス書の新潮流
富豪への道は100万円から -「サラリーマン富豪」の書棚拝見【1】