国際競争力向上に寄与するコンビナート統合

日本国内でまだ伸びシロがある石油のノーブルユースとして期待されるのは、化学原料としての利用である。それを推進するためには、石油精製設備と化学品製造装置との一体的運用を図るコンビナート統合が、きわめて重要な意味をもつ。コンビナート統合は、

(1)原料使用のオプションを拡大することによって、原料調達面での競争優位を形成する
(2)石油留分の徹底的な活用によって、石油精製企業と石油化学企業の双方がメリットを享受する
(3)コンビナート内に潜在化しているエネルギー源を経済的に活用する

などの理由で、石油業界と化学業界の国際競争力向上に寄与する。今後は、石油のノーブルユースを徹底し、原油からなるべく付加価値の高い製品を作り出すことができるよう、コンビナート内石油精製設備と化学品製造装置との一体的運用を抜本的に強化する必要がある。そのためには、石油精製企業と石油化学企業の事業所を統合し、「1コンビナート1社」体制を構築することが、理想だろう。

わが国の石油業界にとって第2の成長戦略となりうるのは、ガス事業ないし電力事業に本格的に参入することである。いわゆる「オイル&ガス」戦略ないし「オイル&パワー」戦略が、これに当たる。

日本の大手石油元売会社のうち、JX日鉱日石エネルギーと東燃ゼネラル石油は、従来からガス事業を展開している。最近では出光興産が、事業ポートフォリオのなかに天然ガスを加える方針を打ち出した。国際的には一般的な「オイル&ガス」の時代が、いよいよ日本でも幕を開けようとしているのである。

石油業界にとって新規参入の対象となるのは、ガス事業だけではない。福島第1原発事故を契機にしてシステム改革が進む電力事業も、有望な参入対象となりうる。その場合の参入のあり方は、従来の重油や残渣油を利用したIPP(独立系発電事業)の域を超えたものとなるだろう。例えば、東京電力の再生プロセスで東京湾のLNG(液化天然ガス)火力発電所が売却されることになれば、JXグループがその買い手として名乗りをあげる可能性は大いにありうる。「オイル&ガス」の時代の到来は、「オイル&パワー」の時代の到来をともなうものとなるかもしれない。