――ユニクロでは震災の後、柳井さんが直接、店長たちに「看板の明かりはつけろ」と指示したそうですが。
ファーストリテイリング会長兼社長 
柳井正氏

【柳井】ええ、そうしました。それは節電をしないということではない。我々の店はロードサイドが多い。看板の照明を落としてしまったら、営業していないと思われる。それではお客様が入ってきません。ですから、看板の明かりは落とすなと指示しました。その代わり、バックオフィスの照明は落とし、店内の明かりは抑えて節電している。節電は必要だけれど、やり方があると思ったのです。

しかしねえ……、看板に明かりをつけていたら、通行人から「どうしてユニクロは消灯しないんだ」と怒られて、消してしまう店長がいる。それを聞いて、私はあらためて指示しました。

「何度、文句を言われても、看板の明かりは消すな。その代わり、文句を言ってきた人に店内に入ってもらい、照明を落としている様子をお見せしろ、と。小売業にとって看板に明かりをともすことはメーカーがラインを動かすのと同じ意味だと伝えるのだ」

世の中のムードに従っていれば軋轢は起きないけれど、それでは日本人の活力は失われてしまう。復興、再生、成長に必要なのは私たちひとりひとりの活力なんです。

――柳井さんは日本が元気になるにはビジネスマンが「商売人の気質」をもう1度、取り戻さなくてはならないとも主張されています。

【柳井】ええ。僕はうちの社員や日本の若い人には世界で活躍できる「商売人」になってほしい。

日本は資源のない国です。敗戦のときには設備やインフラがすべてなくなった。それから、みんなが一生懸命、商売をして、外国へ出かけていって、輸出を伸ばして豊かな国を築き上げた。戦後、日本人は商売人として頑張ったから、復興を果たすことができた。ところが、いつの時代からか商売人気質を忘れて、製造業の職人気質だけを強調するようになった。

しかし、「オレたちはいいモノを作っている」という自負だけでは商品は売れません。

売れるためには3つの要素が必要です。まず、商品がいいこと。これは大前提。加えて、商品のイメージがいい、そして商品情報がいいこと。3つが揃わなくてはヒット商品にはならない。ところが、日本のメーカーの大半は「商品がよければ自然と売れていくだろう」と考えている。しかし、商品自体がよくても、売れないものはたくさんある。いくらいいモノでも、モノを作って、そのままにしておいて、売れる時代ではありません。

(野地秩嘉=インタビュー・構成 岡倉禎志=撮影)
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