同社の経営理念は単なるスローガンではなく、本気で実現しようと取り組んできた実績の裏打ちもある。それは「意味のある仕事をしたい」人たちにとって強い動機付けとなろう。逆に利益追求に走りすぎ、ときに社会と無用の摩擦を起こしてしまうタイプの企業は、たとえ急成長ベンチャーであってもこうした人たちにとってあまり魅力はないだろう。

収入面を考えると、外資系コンサルティングファームと比べたら率直に言ってクックパッドは見劣りするのではないか。そう葉山氏に尋ねると「比較対象はコンサルタント時代ではなく起業してどんどんキャッシュが出ていった頃なので、いまのほうがずっとよい」と笑う。

図を拡大
「食に関する生活インフラ」に

「結局、何に重きを置くかが大切で、やりがいとそのほかの条件との天秤なのかなと思います。私は『これをやりたい』という思いはいっぱいあったのに、何も形にできないときが1番辛かった。いまは思いを形にできる環境があり、もしかすると将来ここで学んだことを活かし、自分でビジネスを立ち上げられるかもしれない。こういうキャリアもありだと思っています」(葉山氏)

クックパッドははたして新規事業群を成功させ、「食に関する生活インフラ」になれるだろうか。どの事業もスタートから間もなく、収益を云々する段階ではないが、現時点ではいずれも黒字化には至っていない。ただ、慌てて目先の利益を追うことはしないと山岸執行役は言う。

「小さなことをやって目先の売り上げ、利益をつくることはできると思いますが、もっと大きな機会をとらえ、腰を据えて愚直に取り組んでいきたいと考えています。まさにクックパッドは最初の8年間、利益が出なかったのですが、大きな志を持って愚直に取り組んだ結果、現在のような姿になりました。もちろんサービスをつくる部分は短期間でやりつつ、クックステップの『料理の伝承』『料理の上達支援』という大きなビジョンを実現することに向かっていきたい」(山岸執行役)