Q.熱中症にかからないためにどうしたらいいですか?

現代の日本では、春から徐々に、という自然の暑熱順化は難しくなっていますので、意識的に汗をかく習慣を大切にしてもらいたいと思います。

夏本番を迎える前から、散歩やサイクリングなどの軽い運動をしておきましょう。暑い時期になっても、朝夕の涼しいときに5分でも10分でもいいので、体を動かしておきましょう。

シャワーではなく、湯船に漬かって汗をかくこともおすすめです。40℃ほどのお湯に5分漬かるだけでもじんわり汗が出てくるはずです。

大事なのは、汗をかく活動を継続すること。汗をかかない日が続くと、せっかく身につけた暑熱順化が1~2週間で消えてしまうという報告もあります。

汗の拭き方にもコツがあります。かいた汗を肌に残したままだと、肌あれの原因になりますし、汗腺をふさいでしまうことにもなります。とはいえ、完全に拭いてしまうと肌が乾燥してしまいます。理想は、皮膚にうっすら水分が残る程度に、やわらかいタオルでポンポンと、ほどよく汗を拭きとること。少し残った水分が蒸発して気化熱となり、体温を下げてくれますよ。

帽子や日傘をはじめ、首に巻く冷却材やハンディー扇風機、ファンつきの冷却服など、熱中症対策のグッズも進化してきています。うまく取り入れるといいでしょう。

同時に、生活習慣を整えることも大事です。体温を調節するのは自律神経です。寝不足や疲れがあると、脳の視床下部でコントロールされた自律神経が「暑い」「寒い」と感じる力が低下します。ニュースなどで、暑さを感じない高齢者の話を聞きますが、子供たちの中にも一定数います。しっかり睡眠をとって、脳のセンサーが働くようにしておきましょう。

寝るときも、エアコンを上手に使いましょう。

ほどよく汗がかける程度に温度設定をし、タイマー機能で切るのではなく朝までつけっぱなしがいいと思います。パジャマは長そで、長ズボンのものを着用し、タオルケットを体にかけておくとエアコンの風による皮膚の乾燥を防ぐことができて、快適に眠れます。

暑くなると、アイスクリームやジュースなど冷たいものが欲しくなりますが、温かいお茶やみそ汁をとることがおすすめです。特にみそ汁には塩分も含まれていますから、熱中症予防には最適です。

Q.スポーツドリンクで水分補給って正しいですか?

熱中症の症状が出たら、まずは、水分と塩分を補給し、体温を下げること。緊急の場合は、水道水でもお茶でもかまいません。電解質も一緒にとれる経口補水液があればなおベストです。

体温を下げるためには、風通しのよい日陰や冷房の効いた場所に移動し、衣服をゆるめて体を楽にします。そのうえで、首やわきの下、鼠径そけい部(脚のつけ根)など、血管の集まっているところを保冷剤や冷たいタオルで冷やします。

水分がとれて、意識がしっかり戻れば、通常は半日から1日で症状は治まります。解熱剤は不要です。ただし吐き気や頭痛などの症状が半日から1日続くときは、医療機関でしっかり診てもらったほうがよいですね。

熱中症の予防として、スポーツドリンクを飲む子がいますが、こちらは緊急の場合以外、控えていただいたほうがいいと思います。

スポーツドリンクはとても糖分が多いからです。

WHOが推奨する1日の糖分の摂取量は25g(学童は20g)ですが、スポーツドリンクの中には500mLに30gもの糖分が入っているものもあります。これは角砂糖7~9個分に当たります。1本でも1日の摂取量を超えてしまいますから、毎日飲み続けると高血糖になる可能性があります。いわゆるペットボトル症候群ですね。

ちなみに、経口補水液の糖分は、500mLで9g程度(※オーエスワンは100mL当たり1.8g)。いずれも場面限定で飲むようにして、日常的に水やお茶の代わりに飲まないことが大前提です。

Q.特に、子供たちにしてほしいことは何ですか?

私は、子供たちを過度に守りすぎるのもどうかと危惧しています。

今は学校でも家庭でも、空調が効いていて、暑さ対策、熱中症対策がしっかりとられています。もちろん、それは気候変動の影響もあり、今の時代に合わせていることなので、必要なことではありますが、子供たちが管理されすぎているようにも思うのです。

暑いなら暑いなりに、子供自身がどうするか考え、熱中症を避けるために工夫する。そうすることで、子供の自己管理能力が育つのではないでしょうか。

もちろん最初は、親御さんのサポートが必要です。

例えば、親子で朝、天気予報を見て、今日はどういう服装で出かけるのか、水分はどれぐらい必要になるか、一緒に考えてみてはどうでしょう。学年が上がったら、それを自分ひとりでできるようになるといいですね。

外から帰ってきた子供には、「今日は大丈夫だった?」と声をかけてみましょう。「うまく汗をかけなかった」「頭がクラクラした」といった反応があるときは、「それは軽い熱中症だったかも」と教えてやることも大切です。次はどうしたらいいか、親子で考えることができれば、プチ熱中症も学びの材料になると思います。

熱中症は原因がシンプルで、予防できる疾患です。ふだんから親子でコミュニケーションをとっておけば、早めの対策で予防につなげることができるでしょう。小児科医としては、熱中症対策を通して、自己管理能力を身につけてほしいと強く思っています。

【図表】熱中症の症状と対策

※本稿は、『プレジデントFamily2025夏号』の一部を再編集したものです。