子供が自発的に行動するように

長男と長女はシドニーでも自分の意志で水泳を続けた。熱心なスクールだったので、日本ほどでないにせよ練習時間は長かった。小学校高学年ともなると登校前の朝練が基本で、さらに放課後も夕方遅くまでトレーニングを行うことがあった。朝は4時起きで、家に帰ってくるのは夜の7時。翌日のことを考えると、9時にはベッドに入らねば体調を崩してしまう。寝るまでの2時間でシャワーを浴びて食事をし、学校の宿題を仕上げると、時間はほとんど残っていない。けれどもその年頃の子供には、友達とのチャットなどやりたいことはいくらでもある。

「だから私は2人に諭したんです。『あなたは9時には寝なくちゃいけないんだよね? だったら9時までにやらなきゃいけないことを全部終わらせて、それでもまだ時間が残っていたら、チャットでもなんでも好きに使っていいよ』と。すると、子供たちが自分の意志で自分の時間を管理して、何ごともやるようになりました。私たち夫婦が勉強を押し付けたことは一度もありません。その意味では、まったくの放任主義です。ただ、子供が自発的に行動するよう持っていくことには気を配ってましたね」

自分の頭で考えて自分で発言するディベート教育

義務教育のスタートとなる小学校を厳選したり、子供たちに自己管理の習慣を身につけさせることには心を砕いた土方氏だが、学校で具体的にどんな授業を受けているのかについては、およそ無頓着だった。ただひとつだけ、オーストラリアならではの美点だと感服したところがある。小学校の低学年から、各生徒が決められたテーマに対する自分の意見を皆の前で発表する授業があるのだ。そして簡単なディベートをするような時間もある。自分の頭で考えて自分で発言する機会が、学校教育の中で当たり前のように設けられているのだ。

日本と同じく、シドニーのあるニューサウスウェールズ州で小学校入学から高校卒業までに要するのは12年間。ただニューサウスウェールズは6・6制で、日本でいう中学、高校が合体した形で『ハイスクール』と呼ばれる。

長女の勝麗も長男の神優も、小学校を学年トップの成績で卒業し、勝麗は地区で一番の公立女子校に、神優もやはり地区最難関の公立男子校に進学した。

「子供が家で机にかじりついてガリ勉をしていた記憶なんてないんですけどねえ。むしろ、さほど勉強もしていないみたいなのによくできてるよな、と思っていたぐらいです。学校の授業と自宅でのわずかな時間でよほど集中していたのか、ものごとの要点をつかむ能力が高かったのか、親でもちょっとわからないんですが……」