小児科を受診しなくてもいい

頬が赤くなったあとには、腕や脚にうっすらと赤い皮疹が出て、レースの様にまだらになることが多いでしょう。真っ赤な頬のほうが目立つので、首から下の変化には気づきにくいかもしれませんが、体幹に皮疹が出ることもあります。頬や体の皮疹はかゆみが強い子もいるでしょう。日光に当たるとその部分の皮疹がひどくなったり、かゆくなったりと悪化することがあるので、あまり日に当たらないほうが安心です。

リンゴ病の多くは症状が軽く、およそ1週間で自然治癒して痕も残らないため、特別な治療薬もワクチンもありません。かゆみや痛みなどが強い場合、小児科を受診すれば症状に対する薬が処方されますが、基本的には投薬などの治療は必要ないのです。

また、学校安全保健法では「診断・治癒証明書」を必要としない疾病に分類されているので、頬が赤くても全身状態がよく元気なら登園・登校できます。ヒトパルボウイルスB19は、皮疹が出る7〜10日前がもっともうつりやすく、顔が赤くなって以降は感染力がほぼなくなるからです。それでも学校や幼稚園、保育園によっては登園許可証を求められることがあります。なお、子どもでも大人でもリンゴ病になって数週間は、一時的に日光、運動、暑さ、発熱、精神的ストレスなどで発疹が再発することがあるので注意してください。

抗体のない妊婦さんは高リスク

以上のようにリンゴ病は、たいていの人にとっては、それほど怖くない病気です。でも、リンゴ病にかからないよう特に注意しなくてはいけない人がいます。

それはまず、妊娠初期の女性です。妊娠初期の女性がヒトパルボウイルスB19に感染すると、胎盤を通して約20%の確率で胎児も感染します。ヒトパルボウイルスB19は、赤血球を作るもととなる赤芽球前駆細胞に感染し、赤血球減少を起こすため、すべての胎児がなるわけではありませんが、重症貧血に陥るリスクがあるのです。なかには、胎内でリンゴ病に感染したあと、3週間〜2カ月までの間に重症貧血から心不全になり、さらに全身がむくむ「胎児水腫」という病態に進行し、命に関わるくらいひどくなるケースも。感染した胎児のうちの10%は流産したり、死産になったりします。

部屋の中でおなかに手を置く妊娠中の女性
写真=iStock.com/west
※写真はイメージです

日本では、妊娠初期に産婦人科で風疹ウイルスなどに対する抗体を検査するのですが、リンゴ病の抗体は希望者しか検査しません。日本の妊婦さんのおよそ20〜50%しか抗体がないので、つまりリンゴ病にかかる危険性のある人が50〜80%もいるということになります。過去にリンゴ病になったことがある女性はいいのですが、そうでない場合は心配ですね。過去最大の流行中の今は、念のため抗体検査をしておいたほうがいいでしょう。