猫のイラストを使った「ゆる系」「脱・文法」路線

その一方で、英語への苦手意識を解消するようなゆるい本や、脱・文法系の本も出てきている。

「この数年は語学書の多様化が進んでいる印象があります」

いくつかの出版社がリラックマやスヌーピーなど癒やし・キャラクター系の本を数多く出すようになった。

特徴的な猫のイラストで知られる『mofusandの英会話』(リベラル社)はその筆頭だ。

英語本市場の3つのトレンド

直近の2024年から2025年にかけてはどのようなトレンドが見られるのだろうか。

「2025年の英語学習本市場では、実用性を重視した定番教材、先述の『80パターン』やYouTubeやアプリと併用して学習する『Jump-Start! 英語は39日でうまくなる!』(Linkage Club)が1つ。大人の学び直し需要に応える教材、『中学英語をもう一度』や『今からでも遅くない! 60代からの英語学び直し術』(プレジデント社)などが1つ。さらに、効果的な学習法を提案する書籍というジャンルも注目されています」

具体的には先述した『英語が日本語みたいに出てくる頭のつくり方』や『英語ピクト図鑑』、さらに『ChatGPT英語学習術 新AI時代の超独学スキルブック』(アルク出版)などがあるという。

神山氏は、「効果的な学習法を提案する本は、SNSやメディアとの相性がよく、取り上げられやすいことも追い風になっているかもしれません」と指摘する。

総合ランキングに英語学習本が入る時代に

そのなかで、『英語ピクト図鑑』や『英語が日本語みたいに出てくる頭のつくり方』は語学書コーナーの枠を飛び出して売れ始めてきている。それは異例のことだという。

「ジュンク堂書店 池袋本店は8階に語学書・学習参考書があります。一方、最も目立ち、お店の顔ともいえる場所は、やはり1階の話題書や総合ベストセラーの棚です」

この1階で英語学習本を中長期的に並べてもらうためには、「売れそうだ」というデータを示したうえで、陳列したあとも定期的に売れ続ける必要があるという。

マーク(村木幸司)『見るだけでわかる‼ 英語ピクト図鑑』(プレジデント社)
マーク(村木幸司)『見るだけでわかる‼ 英語ピクト図鑑』(プレジデント社)

「先にあげた2冊を筆頭に、いくつかの本がそれを実現しています。英語ではありませんが、語学書としては2022年に『教養としての「ラテン語の授業」』(ダイヤモンド社)が同じような動きで、すごく売れたという記憶があります」

また、TOEICや英検対策の定番も引き続き根強い人気があり、「幅広い学習者層に支持されている」という。

さらに2025年は478大学と過去最大となった外部検定利用入試の影響から、英検上位級の学習需要の高まりや、2020年から始まった小学校での英語教育の必修化による、英検4~5級への需要も大きくなっている。

20~50代の昇進や転職、キャリアアップにも活用できる実践的な英語を身につけたいという需要や、シニア層の学び直し意欲もいまだ旺盛だ。

結果的に、冒頭でも書いたような、リアル書店でもネット書店でも、多彩な英語学習本が、いくつも上位に食い込むようなトレンドが2025年に生まれているのだ。