「速読英単語」や「DUO」シリーズが出版された1990年代
1990年代は、英語試験対策が顕在化し、音声教材が登場してきたタイミングである。暗記一辺倒だった受験英語から、「実際に使う」ための英語が意識されはじめた過渡期でもある。
パソコンの登場も少なくない影響があっただろうが、それ以上に就職氷河期という社会的な背景が関わってくる。英語試験対策の顕在化は、激化する就職や転職活動のなかで、TOEICスコアを重視する企業が増加したことと比例するからだ。
この時代にヒットした英語学習本の代表作には、1992年に初版が出版された「速読英単語」(Z会)や「DUO」(アイシーピー)シリーズなどが挙げられる。いずれも、現在までつづくロングセラーになっている。神山氏はこう続ける。
「これまでの英語学習本は、『定番本が長く売れ続ける』というのが定石で、語学コーナーの売上を支えてきました。“速単”やDUOシリーズのなかでも、特に2000年に出た『DUO3.0』は、その代表格とも言えると思います」
「使える英語」と「効率性」が重視された2000年代
2000年代に入ると、経済のグローバル化とともに、TOEICスコアを昇進や海外赴任の要件にする企業が増えたことも後押しし、いかに高スコアを獲得するかという点に重きを置く英語学習者が増えていく。それと同時に「効率よく学ぶ」ことと、「使える英語」を重視する傾向がより加速していった。
この時代の特徴を表した本として、「忙しい社会人が短時間で継続的に英語を身につけるための本として売れたのだと思う」と神山氏が分析する『英語で日記を書いてみる』や『どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』(ベレ出版)だ。
特に「書く」という需要はその後も根強く残っている。2018年には「シニア層にも受けた」という『英文法授業ノート』(ぺりかん社)や、2020年に話題となった『英語日記BOY』(左右社)などにもつながっていった。
さらに、2012年になるが、現在でもつねに英語本のベストセラーに名を連ねる“金フレ”こと『TOEIC L&R TEST 出る単特急金のフレーズ』も出ている。ちなみに著者のTEX加藤氏は、著書の累計が500万部を突破したと同氏のSNSに投稿している。

