乳児「ママの機嫌をとらなければ」
ある研究では、生後6カ月の乳児でも、母親があまりかまってくれないことを本能的に感じ取れるという結果が出ています。この被験児は、母親から見られているときには微笑み、母親から注意を払われていないときには、何の表情も表していませんでした。被験児は、本能的に次のようなことを感じ取ったのです。「ママとうまく結びつくには、私がかわいく微笑む子どもになって、ママの機嫌をとらなければいけない」。
生後6カ月の乳児でも、すでに親子関係に対する責任を引き受けているのです。逆に、親が子どもの表情を敏感に感じ取って正しく解釈し、それによって適切に対応できれば、子どもは「親から理解されていて、自分はこのままでいいんだ」と思えるようになります。
乳児期の子どもと親の交流はその後、ますます細やかになり、親子間の習慣や期待がどんどん複雑になっていきます。その例を挙げてみましょう。乳児は泣き叫ぶことで親にそばに来てもらおうとしますが、次第に親子間で特定の状況に対する特定の儀式のようなものができてきます。
親と子どもが信頼を築くプロセス
たとえば、子どもが痛がっているときに、母親はいつも同じ慰めの言葉や行動をするようになるでしょう。すると子どもは、親にそばに来てもらうだけでなく、親のそうした特定の反応も期待するようになるのです。
もちろん、察知力のある親であっても、子どもからのシグナルを見逃してしまうことも多くあります。親が子どもの感情に同調しない(敏感に反応できていない)ときには、乳児期であっても子どもは、この親子間の不調和を嫌がるため、これを修復しようとして泣き出したりします。すると、すぐに親もこの不調和を修復しようとします。この「不調和の修復」こそが、人間関係における信頼を築くプロセスなのです。
大人になってからもそれは同じです。信頼は、まったく対立のない調和のとれた関係の中で築かれるとはかぎりません。対立や不調和が発生したときに互いに調整し合っていくことでも、信頼は築かれていくのです。
子どもは乳児期に親との不調和を通じて、自分は親に対してどうふるまえばいいのか、少しずつイメージを膨らませていき、生後12~18カ月の間で、実際にその経験をたくさん積み、親とうまくやっていくための対策を身につけていきます。さらにこの時期には、基本的信頼感あるいは基本的不信感が発達し、それらが自己価値と結びついていきます。こうして生後2年間で、心の基盤が築かれるのです。

