「アベノミクス」で、日本経済に明るい兆しが見えてきた。今後、住宅市場はどのように動いていくのか。不動産事情に詳しい住宅ジャーナリストが鋭く切り込む。

「景気に左右されずに考える」
という選択

アベノミクスで日本経済には明るい兆しがいくつか表れてきた。円安によって輸出系の企業の業績が回復。株価も上昇傾向で、日本の景気は今後よくなる、のかもしれない。不動産価格も上昇している、といわれるが、それは極めて限定的な現象だ。

では、今のように「これから景気がよくなる」という時期に、住宅を買うべきなのか。それとも待つべきなのか。

私は、大まかにいって「子育ての住まい」が今すぐほしい人は「買うべき」であるが、「待つべき」ケースや「景気に左右されずに考えるべき」人もいる、とお答えしたい。

つまり、ケース・バイ・ケース。基本的には、買うべき住宅の種類や立地によって答えは異なる。大切なのは「何のために住宅を買うのか」という、購入の目的と理由である。

買うべき場合は…

「都心エリアに今すぐ必要」なら、
買ってよいが、焦りは禁物と心得よ

まず、結婚や子育てで「今すぐ」にでも新しい住宅の購入を希望しているなら、まさに今すぐ買ってもよいだろう。特に都心エリアで新築住宅の購入を考えているケースについてはそうなる。

というのは、首都圏などでは建築費が高騰している。土地価格もアベノミクスで売り手側が強気に転じた。今後、新たに供給される新築マンションの価格は、これまでより上がることはほぼ確実。

したがって、今すぐにでも新築住宅(特にマンション)を購入したいのなら、現在販売されている物件から選んでおいたほうが、値上がりした後で「あのとき、買っておいてよかった」となる場面がありそうだ。それも、すでに完成しているか、竣工が近づいた物件なら「アベノミクス以前」の弱気価格のままのこともある。だが、そういう物件は今のところ猛烈な勢いで売れているので、早めに買わないと市場から消える。

ただし、焦りは禁物。不動産というものは慌てて買うとロクなことがない。「前からこの物件を検討していて、買うかどうか迷っていた」ようなケースなら、購入を決断してよいと思う。逆に、今まで何もしていないのに「これから探して、あるモノの中から選ぶ」というやり方が一番危険。失敗するケースが多くなるだろう。そういう方は、焦らずに住宅購入の基本から勉強してほしい。

「今すぐ買う」という選択は、例えば東京の港区といった都心の人気エリアなら、なおよいはずだ。新築マンションが顕著に値上がりするのは、そういった都心の人気エリアからだと予想される。郊外に行けば行くほど、値上がり幅は抑えられ、ほとんど価格が変わらないエリアも多そうだ。なぜかといえば、郊外エリアではたとえ住宅価格が値上がりしても、需要層の所得が上がらなければ結局は売れないからだ。