景気に左右されない住まい選び
郊外エリアについては、アベノミクスに影響なく中古住宅の価格は下がり続けるから、あまり関係ない。いいものがあれば購入すればいいし、気に入った物件がないのなら慌てる必要はない。
住宅購入を一種の「投資」だとする考え方がある。それなら、良質な物件を安い時期に買って、一定期間住んだ後に、できるだけ高く売ることを目指せばいい。その場合には「この先、値上がり確実な都心部の住宅は今、買うべき」という考え方は十分に成立する。
また、アベノミクスがめざす「2%のインフレ」が到来するのなら、その前に買っておけばインフレによる表面的な値上がり益が享受できる、という発想もある。
しかし、実のところ住宅の実質的な価格は上がらないはずだ。
新築、中古にかかわらず、この国で販売されているほとんどの住宅は「買えば数年後に必ず値下がりしている」と考えるべきだろう。たとえ2%のインフレになっても、それは変わらない。
アベノミクスが始まるまでは、大都市圏の都心では毎年2~3%、郊外で5%程度住宅価格が下落していた。その理由は、住宅の数が増えているのに人の数が増えない、もしくは減っているから。この需給バランスの悪さは、アベノミクスで景気が多少よくなっても改善されない。逆に今後、景気が回復すると、新築住宅がどんどん建設される。すると既存の中古と合わせた市場への供給量は増えるから、需給バランスはむしろ悪化する。
今、アベノミクスで一部都心にバブル的現象が見られる。しかし、バブルなら必ず弾ける。また、今回の不動産ブームがたとえバブルであったとしても、その波及地域は限定的。現在、住宅価格の上昇がうかがえるのは、東京の都心部周縁と関西圏の一部、そして名古屋圏の都心部のみ。それ以外のエリアは、依然として下落か横ばい基調であると考えていいだろう。
資産価値で住まいを選ぶ場合、そういったエリアはもっとも優れているといえる。「10年後に売る」ことが前提なら、前述の「買うべき場合」になる。しかし、選択肢はかなり狭くなるだろう。