私立中高一貫校 近年のトレンド②
高大連携とは何か?
先ほど、大学付属校化する学校が増えていることについて具体的事例を挙げて説明しました。
日本の大学はすでに一八歳人口減少の影響をもろに受けていて、全国の私立大学・私立短期大学のうち約半数は「定員割れ」(入学者数が募集定員に満たない)を引き起こしているようです。ですから、大学サイドはこの先の生き残りを懸けて私立中高に目を付け、法人合併するなどして傘下に置く、つまり、大学付属校化に踏み切るのでしょう。
大学が存続するための策としては「中高の付属校化」だけではありません。近年は主として大学側からのアプローチでさまざまな中高が大学と「高大連携」の協定を締結するようになりました。
具体的には、大学教員による出張授業や講演会の実施、互いの学生どうしの交流イベントの開催、中高生の大学講義への参加(その中には正式な単位として認定されることもある)、そして、協定校推薦枠(大学への推薦枠)の設置などをおこなっています。
たとえば、上智大学は約四〇校におよぶカトリック高校との間で連携協定を締結しています。医学部をはじめ九学部を有する順天堂大学は五〇校以上の高校と連携協定を結んでいます。この二大学はあくまでも一例であり、首都圏にある私立大学の大半は複数の中高と高大連携の試みをしています。
二〇二四年だけでも、東京慈恵会医科大学が桐朋・桐朋女子(調布市)と、東京医科大学が吉祥女子(武蔵野市)と、神田外語大学が実践女子学園(渋谷区)と、法政大学が山脇学園(港区)、工学院大学附属(八王子市)と、東京理科大学が國學院久我山(杉並区)、田園調布学園(世田谷区)と、東京農業大学は跡見学園(文京区)と高大連携協定を締結したというニュースがありました(きっと他にもたくさん同様の事例があると思います)。
そういえば、東京都調布市にある女子校・晃華学園(調布市)は二〇二四年に入ってから一気に日本女子大学、津田塾大学、順天堂大学、芝浦工業大学、東京都市大学と高大連携協定を結びました。このような事例を見て、系列大学のある付属校であるにもかかわらず、他の大学との新たな結びつきが生まれるところが散見されるのは個人的に驚いています。
この高大連携は個人的に中高生にとって良い学びの機会をたくさん提供してくれるように感じます。中高生のうちから大学のアカデミズムの恩恵にあずかることができるのは、子どもたちにとっては外の世界に目を向けるきっかけになるでしょうし、将来の進路を考えるうえでの好機になり得ます。
三輪田学園の事例
この「高大連携」の実践について、千代田区にある女子進学校・三輪田学園を例に少し詳しく紹介していきましょう。三輪田学園は市ヶ谷駅を最寄りにする学校で、目の前とその背後には法政大学の市ヶ谷キャンパスがあります。
そのような「ご近所」どうし、二〇一五年より連携協定を締結し、たとえば、そばにある「外濠」(旧江戸城を囲む外側の堀)の(水質改善などの)再生プロジェクトを法政大学の学生たちと三輪田学園の生徒たちが一緒になって参加していたそうです。
また、法政大学の留学生との交流会や、学生たちと共同で理科実験教室といった単発イベントをおこなってきました。そして、二〇二二年度、三輪田学園は法政大学との高大連携のさらなる拡充を図りました。具体的には、法政大学からの協定校推薦枠が三〇名ほど設けられるとともに、三輪田学園の高校生が法政大学の講義を早期履修することも可能になりました。また、高校三年生を対象にした高大連携講座もスタートしました。
さらに、三輪田学園は二〇二三年十月に東京女子大学と、翌月十一月には津田塾大学と高大連携協定を締結しました。大学教員による三輪田学園の生徒たちを対象にした特別講義をおこなったり、大学の行事に三輪田学園の生徒たちが参加できたりするそうです。また、学校どうしの教育や進路に関する情報交換を積極的におこなっていくそうです。
わが子が志望する学校、または保護者が気になっている学校があれば、インターネットで「○○中学校高等学校 高大連携」と入力し、検索してみてください。そうすることで、大学との何かしらのつながりを知ることができるかもしれません。


