近年、首都圏を中心に中学受験が活況を呈しており、塾に通う子どもが増えている。しかし、塾経営者の矢野耕平さんは「わが子を塾に通わせる親御さんの中には、子どもの教育のすべてを丸投げしたいというケースもしばしば見受けられ、『わが子が邪魔』という思いが透けて見えてしまうこともある」という――。

※本稿は、矢野耕平『ネオ・ネグレクト 外注される子どもたち』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

勉強をする子供
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「アウトソーシング」を好んで口にする親

【ネオ・ネグレクト〈名〉 衣食住に満ち足りた生活をしていても、親がわが子を直視することを忌避したり、わが子に興味関心を抱けなかったりする状態のこと。[――の行為に及ぶ]】

「いままで多くの親の相談に乗ってきたけれど、『アウトソーシング』をすぐ口にする親は一様に良くない傾向が見られるよね」

あるとき知り合いの同業者と談笑していたときに、こんなことを言われた。「アウトソーシング」とは、直訳すると「外部委託」「外注化」である。

ただ、そのことばを耳にした当初、わたしは正直ピンとこなかった。わたしは中学受験専門塾を経営しているが、そもそも塾というのは、「ご家庭の手ですべて解決できない」からこそ、わが子の中学受験勉強をアウトソーシングする場ではないのか。そう感じたからだ。

けれども、彼の発言内容をじっくりと考えてみたところ、その真意がわかってきた。彼が口にした「アウトソーシング」とは、すなわち「丸投げ」を意味していたのである。

さて、わたしが日々従事している中学受験の世界に見られるネオ・ネグレクトについて言及したい。

ここ1〜2年は幾分落ち着いたが、首都圏を中心に中学受験(主に私立中高一貫校の受験を指している)を志す子どもたちの数が増加していて、たとえば、数年前には中学受験を題材にしたテレビドラマが放映されたし、中学受験の塾講師を主人公に子どもたちの受験模様を描いた漫画がヒットした。

中学受験がブームと形容しても差し支えないくらいに、大きな盛り上がりを見せていたのである。ブームの渦中にいると、主役が子どもであるはずの中学受験であっても、親がついヒートアップしてしまうものだ。

では、このような親は問題であると断罪すべきなのだろうか。

そうとは限らない。なぜなら、わが子の中学受験に言い知れぬ不安や焦りを抱いてしまうということは、換言すれば、わが子に目が向いている証拠だからだ。自身の過熱ぶりに気づいたら、それを都度冷ましてやればよいだけである。そのために、わが子の中学受験を「アウトソーシング」している進学塾の講師に相談に乗ってもらうのは有効である。

一方、わが子の中学受験をきっかけに親が子に暴力を振るったり、家族関係が崩壊したり……などという事例がメディアの記事などでセンセーショナルに取り上げられることがある。もしそれが事実であれば、もちろん言語道断である。こうなってしまうと、もはや教育虐待に該当すると断じてよい。