すぐに心が折れてしまう人たち

レジリエンスが低いと、困難な状況を耐え抜くことができない。そんなときに口にするのが、「心が折れた」というセリフだ。

榎本博明『自己肯定感は高くないとダメなのか』(筑摩書房)
榎本博明『自己肯定感は高くないとダメなのか』(筑摩書房)

レジリエンスの研究は、逆境に強い人と弱い人がいるけれども、その違いはどこにあるのかという疑問に端を発している。

過酷な状況で、一時的に落ち込んでも、すぐに回復する人もいれば、いつまでも落ち込んだままで、なかなか日常生活を立て直すことができない人もいる。

何か失敗したときは、だれでも落ち込むものだ。でも、失敗に落ち込むより、失敗を糧にすることが大切だ。そのためには、感情反応より認知反応を心がける必要がある。

感情反応が強い場合は、ひどく落ち込み、心が折れやすくなる。それでは自己肯定感は高まらない。

「失敗は貴重な気づきを与えてくれる」「失敗は成長のきっかけになる」と思えば、失敗を過度に恐れずにすむ。そして、「どこがまずかったのか」「同じような失敗を繰り返さないためには、どんな点に注意したらよいだろうか」というようにメタ認知を働かせ、自分にとっての課題を知ることで、失敗を今後に活かすことができる。

そのように失敗を糧にして成長できれば、自己肯定感は自然に高まっていく。

“逆境に強い人”に共通する心理傾向8つ

挫折体験もポジティブにとらえるなど、ネガティブな出来事や状況にもポジティブな意味づけをしている人がゆったりした自己肯定感を感じさせるといった知見もあるように、ものごとを前向きに受け止めることが自己肯定感につながっている。

これまでに行われてきたさまざまな研究をもとに、レジリエンスの高い人の特徴として、つぎのような性質を抽出することができる。

・自分を信じて諦めない
・辛い時期を乗り越えれば、必ず良い時期が来ると思うことができる
・感情に溺れず、自分の置かれた状況を冷静に眺められる
・困難に立ち向かう意欲がある
・失敗に落ち込むよりも、失敗を今後に活かそうと考える
・日々の生活に意味を感じることができる
・未熟ながらも頑張っている自分を受け入れている
・他人を信じ、信頼関係を築ける

このような心の癖をもつ人は、思い通りにならない厳しい現実に押し潰されそうになり、一時的に落ち込むことがあっても、けっして潰されることなく立ち直っていくことができる。

このような心理傾向を身につけるように意識することが大切である。