「コミュ力が高い」の6つの要素

このような不安の強さが自己肯定感の低さにつながっているというのは十分考えられることである。とくに、間柄を大切にする私たち日本人の場合、人間関係における自信の有無が自己肯定感を大きく左右すると考えられるため、コミュニケーション力を高め、対人不安を少しでも和らげることが重要となる。

今の子どもや若者の間では、コミュニケーション力は笑いを取る能力、おもしろく話せる能力と受け取られているようなところがある。だが、だれもが話し上手になれるものではないし、そのような能力だけで人からの信頼や評価が得られるわけでもない。コミュニケーション力をもっと広い意味でとらえておく必要がある。

コミュニケーション力の心理尺度の開発に際して、僕はつぎの六つの因子を抽出した。

①社交力
 慣れない相手に対しても気後れせず、場にふさわしい会話ができる性質
②自己開示力
 自己防衛的に身構えず、率直に自分をさらけ出す性質
③自己主張力
 自分の考えを理路整然と表現し、相手に説得的に働きかけることができる性質
④感情表現力
 自分の気持ちをうまく表現し、相手の気持ちに訴えることができる性質
⑤他者理解力
 周囲の人に関心をもち、相手の気持ちや考えを汲み取ることができる性質
⑥傾聴力
 相手の言葉にじっくり耳を傾け、相手の自己開示を引き出す性質

対人不安を少しでも和らげ、自己肯定感を高めるためにも、このようなコミュニケーション力を身につけるように心がけたい。

人生は思い通りにいかないことだらけ

③逆境に負けない力としてのレジリエンスを高める

人生は思い通りにならないことの連続といっても過言ではない。

試験で思うような成果が出ない。受験で志望校に合格できない。部活でレギュラーになれない。友だちと仲違いしてしまう。失恋する。

そのように数え切れない挫折に見舞われるのが人生である。

そのたびに「心が折れた」と落ち込んでいたら、人生の荒波を乗り越えていくことができない。当然、自己肯定感は低くなる。

そこで重要になるのがレジリエンスである。

走りに出るスポーティな女性
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レジリエンスは、復元力と訳され、もともとは物理学用語で弾力を意味するが、心理学では「回復力」とか「立ち直る力」を意味する。より具体的には、困難な状況でも心が折れずに適応していく力、挫折して落ち込んでもすぐに回復し立ち直っていく力、きつい状況でも諦めずに頑張り続けられる力のことである。