「無難に関わる」ことが自己肯定感につながる
「人間」という文字を見ればわかるように、私たちは人との間を生きる存在である。人との間のほかに生きる場はない。ゆえに、人間関係をうまくこなせないと、自分に自信をもつことができない。自己肯定感を保つには、人間関係を無難にこなしていくことが必要となる。
とくに問われるのが、苦手な相手とかかわる力である。
親しい相手とかかわることはできても、苦手な相手とうまくかかわることができないという子どもや若者が少なくない。大人になっても、苦手な相手とかかわると思うだけでお腹が痛くなり、取引先に苦手な相手がいると訪問できずに逃げてしまったり、職場に苦手な先輩や上司がいると出社できなくなってしまったりする人もいる。
これでは自己肯定感を保つのは難しい。
ゆえに、学校時代には、親しい友だちとのつき合いを大切にするのはもちろんのこと、とくに親しいわけでもない友だちと無難にかかわる経験を積んでおくことも大切である。
「自分の話はつまらないのでは」という不安
②コミュニケーション力を高める
学生たちと話すと対人不安の強い者が非常に多い。
授業で対人不安について話すと、いつもやる気のない学生さえもが熱心に聴き入り、「まるで自分のことを言われてるみたいだった」「自分だけじゃないとわかって安心した」などと話しに来る。
そこで、『「対人不安」って何だろう?――友だちづきあいに疲れる心理』(ちくまプリマー新書)を書いたわけだが、その内容の一部を紹介すると、中学校や高校時代からずっと悩まされていたのは対人不安だったのだとわかったという者が非常に多い。
対人不安とは、自分が他者の目にどのように映っているか、映ると予想されるかを巡る葛藤により生じる不安のことである。
具体的には、「自分の話なんてつまらないんじゃないか」「場違いなことを言ってしまわないか」「変なヤツと思われるんじゃないか」「自分と一緒にいても楽しくないんじゃないか」などといった不安である。


