健康管理の分野など
幅広い活躍の場

立命館大学に設けられたATC受験資格取得のためのプログラムには、どんな価値があると考えていますか。

桑原 まず、文字どおりの希少価値ですね。英語圏以外の大学がATC育成に取り組むのは、世界でも立命館大学が最初だと思います。

次に、学内の実習環境にも顕著な価値があります。立命館大学は競技施設やトレーニング施設が非常に充実しており、名門のアメリカンフットボールチームなどもある。学内のトレーナーたちのなかにはATC有資格者が3名もいて、学生にとっては、より有意義なトレーナー実習を積める環境が整っています。

また、日本で学べることの意義も重視すべきでしょう。日本の大学での先輩・後輩のつながりは、将来的に仕事をする際にも生きてくるはず。ATCへのニーズは、今後国内でもますます高まってくるでしょうし、もちろん日本で就職して欧米やアジアで活躍するということも十分に考えられます。

いずれにしても、資格の取得にあたっては相応の英語力が要求されます。連携先であるESUの授業の一部をオンラインで受講するうえ、最終的なATCの認定試験は当然英語。そこで私も英語で講義を行い、学生の英語力向上をサポートします。英語が身に付けば、たとえ国内で学んでもグローバルに活躍するための必要条件が備わることになります。もともと立命館大学は国際教育に力を入れており、留学生も多く、日本にいながら異文化に触れる機会が豊富です。ここにはグローバル人材を育む土壌がある。そのことも大きな価値の一つに加えておきたいと思います。

充実のトレーニングルームのほか、個人のエネルギー消費量を正確に測れる測定室(写真左)など最先端の施設・設備が、質の高い学習、研究をサポートする。
日本人ATCの今後の展望と、ご自身の抱負を聞かせてください。

桑原 私が米国での体験を通して再発見した日本人の長所は、忍耐強さです。これは、どんな道を究めるにも必要な資質でしょう。率直にいってケガをめぐっては、アスリートもコーチも感情的になることがあります。トレーナーはそれを忍んでアスリートに寄り添い、復帰へと導かなければなりません。その点、日本人の気質はATCに向いています。忍耐力あるグローバルなトレーナーは、各国のスポーツ界にとって魅力的な存在でしょう。

さらに、私がそうであるように、ATCが対象とするのはプロのアスリートだけに限りません。健康管理や生活習慣病対策、高齢者の介護予防などスポーツ以外の分野でも、運動による効果を引き出せる専門家。それがATCです。そうした潜在ニーズを顕在化させるのも、私の務め。後輩を育てる一方、彼、彼女らが活躍できる場の創出にも力を尽くしていきたいと思います。