教頭からの“個人的な”お願い

ところがなんと次の日、教頭に呼び出されたのです。教頭は申し訳なさそうに言いました。

「すぎやまさん、なんとか日曜日やってくんないかな?」

「でも、すみません、日曜日ですよ?」と私は返します。でも教頭は、

「すぎやまさんの気持ちもわかるんだけど、去年(の顧問)は土日両方やってくれてて、保護者会長さんも熱心な方だから、なんとかやってほしい」
「副顧問にも言って土日のどっちか出てもらうようにするから、なんとかやってくれないか」
「どうしても無理だったら私も代わりに出るから」

と、私に頭を下げたのです。

間違えないでほしいのですが、これは教頭からの職務命令ではありません。教頭が『個人的に』私にお願いしているのです。教員に部活という時間外労働を強制する法的根拠はないのですから。教師たちはそれをわかった上で、善意で部活に土日を捧げているわけです。

「熱血顧問」の後は困る

また、お茶の産地として有名なある県の他の学校に勤務していた時には、これとは真逆のことも起こりました。

新しく赴任した学校で、張り切って5月のゴールデンウィークに部活を入れたんですね。そうしたらなんと……、

「茶摘みで忙しい時期に部活を入れないでくれ」とクレームが入ったんです(笑)。

山間部の学校では、5月の茶摘みシーズンには、子どもたちも茶摘みに動員されるのだそうです。

これは冗談みたいな例ですが、たとえば土日両方練習を入れたら入れたで「勉強する時間がない」「家族で旅行にもいけない」というようなクレームが入る、なんてことは、本当によくありました。本来部活はやる気がある子がやるものなのですが、現状、公立中学校ではやる気がないのに部活に加入している子がものすごい数いるからです。

ほぼボランティアでやっているのに、がんばってもがんばらなくても文句を言われ、休みにしてもしなくても文句を言われる。それが部活の悲しい現実なのです。

また、去年の顧問は熱心な先生だったのに……という話を先述しましたが、この手のトラブルはけっこうあります。

部活が生きがいのような先生が一定数いるのです。

毎日朝練をやって毎週土日も部活をやって、「家庭に居場所ないの?」と心配になるほどの熱の入れっぷり。しかし、そういう先生が異動した後が大変なんです。

後任の顧問がたとえば小さい子どもがいる女性の先生の場合、家事も子育てもやりつつ仕事をしているため、部活にそれほど注力できません。そうすると、保護者からものすごい苦情が来て、大もめになるようなことがよくありました。

なので、そういう熱心な先生が転出した後は、だいたい若手の男性が配置されることが多くなります。「こいつならまだ結婚もしてないし、若いからがんばれるだろ」みたいなノリです。しかし、独身の若手教師にもプライベートがあることを忘れないでほしいと思います。