納得感を持って概念を理解することが必要

以前であれば中堅校の入試問題は、塾のテキストにあるような典型的な問題が主流だった。そこにひとひねり加えたり、初見の問題を出したりするようになったのは、「あなたはこれまで自分なりに考え、工夫をしながら勉強をしてきましたか?」と、学校側が受験生の学びの姿勢を見極めるためだ。その場で試行錯誤しながらも自分なりに考えてみた、という形跡を確かめる問題。難関校になればなるほど、その傾向は顕著に表れてくる。

では、どのような勉強のやり方が望ましいのか――。最も重要なのは、初めてその問題に出会ったときに、「なるほど、そういうことか!」と納得感を持って概念を理解することだ。塾の先生が「この問題を解くときはこの公式で解くよ」と言ったから、その公式を使うのではなく、「なぜそうなのか?」「だったらどうなのか?」「他にやり方はないのか?」と自分なりに考え、「確かにこのやり方が一番いいな」と自分自身で腑に落ちて初めて「ちゃんと理解できた」という状態になる。

特に小学生の子供の場合は、「あのときのあの場面がそういうことだったんだな」「あの動きと同じことを言っているんだな」など、自分の経験や身体感覚と結びつくと理解がしやすい。そういう点では、これまでどんな遊びをしてきたか、どんな会話をしてきたかといった家庭での過ごし方も大切になってくる。

塾が終わった後の「日常会話」で記憶を残す

塾の授業だけで理解させる場合は、講師の指導力が重要になる。もちろん、塾では公式の使い方は説明してくれるし、時には、なぜその公式を使うのかも説明してくれる。だが、子供たちが納得できるように説明するには、講師のパフォーマンス力も必要になる。その点は首都圏の塾よりも関西の塾の方が一歩上手に感じる。関西の難関塾である浜学園が、概念理解を中心としたファースト授業と応用練習のセカンド授業の2つに分けているのも、概念理解の重要性を知っているからだ。小学生の子供たちでも理解できるように、講師同士で模擬授業を行うなど、講師たちの話術が鍛えられている。

だが、一度授業を聞いただけで理解できたと思ってはいけない。人間は一晩寝ると記憶が薄れていく。そこで、授業が終わった後にもう一度思い出す作業をさせる「振り返りの場」が必要になる。とはいえ、塾のある日は帰りも遅く、復習する時間の確保が難しい。

そこで、日常の会話の中で振り返りをさせる。「今日は塾でどんなことを習ってきたの?」「それってどうやって解くの?」「なんでそのやり方がいいのだろう?」と親子の会話の中で質問を投げかけ、子供に説明をしてもらうのだ。その際、問いただすような聞き方をしてしまうと、子供は嫌がる。あくまでも、普段の会話の中でやりとりをするのがポイントだ。そうすることで、記憶が残っていく。

話をする母と娘
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