“公立中進学”も“撤退”も「負け」ではない

もう1人の子は、5年生で中学受験を撤退した子です。5年生だった当時はまだ精神的に幼い子でした。お兄ちゃんが中学受験をしていたので、ご家庭は弟もさせようと当初は考えていたのですが、この子には向いていないなと冷静に判断されました。無理にやらせようとしなかったのは、ご家庭のファインプレーだったと思います。

ご家庭も、本人に挫折感を与えないよう上手に対応して、気持ちを高校受験に切り替えさせました。そして、早々に英語の勉強を始めて、中学校に入るころには、かなり英語の学習が進んだ状態をつくることに成功しました。

教室
写真=iStock.com/gyro
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この子も優秀な成績をキープして、高校受験では法政大学第二高校に進学しました。宿題をしっかりやることができなかった小学生時代とは打って変わって、中学生になってからは毎日のように塾に自習にやってきて、コツコツ勉強していたのが印象的でした。

どちらのケースにもいえることは、ご家庭の対応がとても上手だったことです。「不合格になったら負け」「中学受験撤退は負け」といった価値観を子どもに植え付けず、進路選択のひとつとしてフラットに公立中学校進学を位置づけていたため、子どもは挫折感を抱いたり、自信を喪失したりせずに済みました。そしてすみやかに方向転換して、次の目標である高校受験に向けたスタートを切れたのです。

「どこの学校に進学するかではなく、進学した後が大事。進学した学校を正解にするための行動をしよう」――この心構えをあらためて強調しておきたいと思います。