※本稿は、菊池洋匡『中学受験 親がやるべきサポート大全』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
「偏差値」とは冷静に付き合うべき
【×】うちの子も頑張れば「普通」の成績、つまり偏差値50ぐらいは取れるはず。そしてなんとしてでも偏差値が1でも高い中学に合格してほしい!
→模試のたびに「普通」と考えている「偏差値50」に達しないわが子を見てがっかりし、追い詰められたあげく、子どもを追い詰めてしまう。
【○】「偏差値50」にも「いろいろある」ことを理解している。中学校の偏差値はそのときの人気を表す「株価」に過ぎないこともわかっている。「平均以上は取れて当然」となんとなく考えることもない。
→実際に学校を見学して価値を判断し、学校を選ぶ。わが子の状況を冷静に見るための材料として模試の偏差値を利用できる。
偏差値――中学受験に向けた生活の中では、この数値が常に頭の片隅にちらつくことでしょう。「この偏差値だから、この学校を受けるといいのかな?」「この偏差値で、この学校を目指していいんだろうか……」「この偏差値なのに、危機感がなくて!」
子どもたち同士が小学校で、「おまえの偏差値いくつ?」と聞き合っている場合もあるようです。大人も子どもも、偏差値を「賢さ戦闘力」として単純に捉え、一喜一憂してしまいがちです。ここで、偏差値と冷静に付き合う方法を改めて考えてみましょう。まずは「偏差値にまつわるありがちな誤解」をひとつずつ確認していきます。
模試によって“偏差値が20違う”こともある
この考え方には三つ、ツッコミどころがあります。
ツッコミどころ① 偏差値は模試によって違う。
試しに、SAPIX、四谷大塚、日能研、首都圏といった各模試の偏差値表を見比べてみてください。同じ学校でも、偏差値が大きく異なるはずです。SAPIXで50の学校が、首都圏模試で70だったり……! 首都圏模試で偏差値50の学校は、SAPIXでは……載っていない⁉
どちらを信じればいいのでしょうか? まず、偏差値をむやみに信じるのはやめましょう。そもそも、偏差値は母集団の中の位置を測るものですから、その模試を受けている人がどのような人たちか、によって結果が変わるのは当然です。SAPIX偏差値表のような数字が低めに出る偏差値表は、見ているこちらの視野を狭め、上しか見ないようにさせる力を持っています。載っている学校があまりにも少ないのです。
例を挙げましょう。SAPIX偏差値表の2月1日の欄だと、「かえつ有明」(共学校)の偏差値が37、「獨協」(男子校)の偏差値が34です。そして、その下には学校名がまったく載っていません。この表を見ている人は「ここに名前がない学校は、載せる価値がないのか」と感じてしまいます。
なお、首都圏模試では「かえつ有明」が偏差値61、「獨協」が偏差値60です。下にもまだまだ学校はたくさんあります。四谷大塚合不合だと「かえつ有明」が偏差値47、「獨協」が偏差値49、日能研だと「かえつ有明」が偏差値50、「獨協」が偏差値48です。どちらの学校も多くの生徒が憧れ、受験してきた学校です。全力で臨んで、それでもなお、悔しい思いをする子たちも見てきました。偏差値表に載っている学校が少ないほど視野が狭くなり、実情以上に苦しい思いを自らに強いることになります。