子供が中学受験をする時、親はどんなことを気を付ければいいのか。中学受験専門塾・伸学会代表の菊池洋匡さんは「合格をゴールにしてはいけない。子供が入学後にどういう生活を送れるのかをイメージして、志望校を決めるのが大事だ。たとえ『全落ち』であっても、全く気にする必要はない」という――。(第3回)

※本稿は、菊池洋匡『中学受験 親がやるべきサポート大全』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

“レベルの高い学校”に無理して行かなくてもいい

【×】少しでも高偏差値でレベルが高い学校に入ったほうがより上を見るようになる。子どもの目標も高くなり、モチベーションが上がるはずだ。ギリギリでも入れれば、そのあとはなんとかなるはず……。

→入った後、周囲の学力レベルについていけずに苦しむ。

【○】わが子が志望校にギリギリで入ることが適しているのか見極める。「合格すればそれでよい」わけではなく、入学してからのほうが大事であることを理解している。

→偏差値が低くても、その中学で上位にいたほうが頑張れる子は多い。逆にギリギリの合格でも、入学後も頑張り続ける姿勢があれば活躍できる。どこの中学に入ったとしても、入学後に頑張れるかが大事。

「少しでも偏差値が高く、レベルが上の中学に入ったほうがより上を見るようになる。子どもの目標も高くなり、モチベーションが上がるはずだ」という考え方を聞くことがあります。

確かにその通りです。私が通っていた開成は、誰もが自然と東大を目指す空気ができあがるので、東大受験を「自分には難しい雲の上のこと」とは思わなくなります。クラスメイトが作る、高い「当たり前の基準」に乗っていければ、良いペースで高い目標に向かっていけるでしょう。ただ、誰もがそううまくいくわけではありません。

勉強が嫌い
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私もギャップに傷つき、やる気を失った

先ほど例に挙げた開成の話ですが、「東大を目指すのが普通の流れ」とはいいつつ、実際に合格して進学するのは、学年400人のうちの100人ちょっと。人数としては多いですが、全体の4分の1ですね。授業についていけない苦しい状態だと、周囲の高い「当たり前の基準」と自分とのギャップに傷つく日々が続きます。

かくいう私も、中学受験が終わって気がゆるみ勉強をサボったところ、中1の1学期でクラス最下位に近い成績を取ってしまいました。そして、勉強へのやる気をすっかり失いました。

人が物事に、前向きに取り組むためには「これならできる」という気持ち、自己効力感を持つことが必要です。環境が与えてくれる「当たり前の基準」に追いついていける自信を持てるかどうか、注意が必要です。100点満点のテストで、毎回70点くらいが取れる状況なら、これを100点にするための意欲も湧いてきますが、これが毎回20点とか30点といった状況から「やれるぞ!」「がんばりたい!」と奮起するのは辛く難しいものです。