「入学後」のほうが大事
受験はゴールではありません。ここまで書いてきたとおり、入学後、どう過ごしていくかのほうがずっと大切です。「この合格が正解」「この不合格が不正解」と決まっているわけではありません。
むしろ、受験を通じてつかみ取ったものをどう正解にしていくかのほうが重要なのです。そして、中学受験を通じて手にしてほしい力というのは、この入学した学校、決まった進路を自分の力で正解にしていく力のほうなのです。
私が経営する伸学会は中学受験専門塾ですが、伸学会を創業する前に働いていた2社は両方、高校受験も中学受験も指導している塾でした。むしろ高校受験のほうがメインで、中学受験部門のほうが少数派。中学受験する子の割合は都内でも3割なので、部署として高校受験のほうが大きくなるのは当然かもしれませんね。
そうした会社で働いていたので、私は高校受験する中学生を指導した経験もあります。その生徒たちの中に、中学受験と高校受験の両方で教えた子たちが数名いました。その中で特に記憶に残っているのが、中学受験で2月の入試に全落ちして公立中学校に進学した子と、中学受験は合わないということで5年生のときに撤退し、公立中学校に進学した子です。
“中学受験全落ち”でも、開成高校に合格
2月の入試で全落ちした子はもともと「中学受験がしたいから」ではなく、「勉強が好きだから、もっとおもしろい勉強がしたい」ということで中学受験を始めた子でした。そのため、本人もご家庭も「何が何でも私立の学校に進学」というつもりはなく、行きたいと思った学校を数校受けて、それでダメなら公立に進学と決めていました。
私は基本的にそういう受験プランはお勧めしていません。不合格が続くと不安で頭が働かなくなり、力が出せなくなってしまう子が多いためです。でも、その子の場合は、公立中学校に進学することに対してネガティブな気持ちはまったく持っていなかったし、1月に練習として受けた学校で合格も取って自信もつけていたので「それならば」と応援しました。
結果は残念ながら不合格。そして予定通り公立中学校に進学しました。中学受験が終わってからは、気持ちを切り替えてすぐに英語の勉強を始め、もともと得意だった算数・数学に加えて英語も武器にして、中学校3年間、優秀な成績を取り続けました。最終的には中学受験のリベンジを果たし、開成高校に進学しました。