大学の評判よりも重要な6つの要素

では、いったいなにが将来の成功をもたらすのか。調査の結果、学校での体験、とくに交友関係の質と学生生活に対する熱心さが関わっていることが判明した。幸福度と仕事の満足度が高い卒業生は、大学時代になにかに打ちこんだ経験があるという傾向が見られた。調査の結果、将来の成功への大きな土台となる大学時代の経験は、おもに6つのタイプに分けられることがわかった。

1:学問を胸躍るものに変える教授から学ぶこと
2:教え子の人間性を尊重する教授と出会うこと
3:ひとりひとりの目標の達成を応援するメンターと出会うこと
4:意義のあるプロジェクトに複数の学期をかけて取り組むこと
5:インターンシップに参加すること
6:課外活動に積極的に参加すること

大切なのは入った大学への「適応」

学生が教え子の人間性を尊重して激励する教授と強い絆を築くことができれば、卒業後に仕事で充実感を得る確率は2倍以上にもなり、人生のあらゆる面において成功する確率も同様だった。

ジェニファー・ウォレス『「ほどほど」にできない子どもたち 達成中毒』(早川書房)
ジェニファー・ウォレス『「ほどほど」にできない子どもたち 達成中毒』(早川書房)

さらに、学問の関心と呼応するインターンシップや職業を経験したり、意義のあるプロジェクトに複数の学期をかけて取り組んだり、課外活動に積極的に参加したりした卒業生も、仕事で充実感を得る確率が2倍になった。どんな大学の学生でも──「よい」大学にかぎらず──この6つの項目をクリアすることができる。この結果から、入学した大学の評判よりも大学生活への「適応」の方が重要だとわかる。

よい「適応」とは、大学のコミュニティのなかで自分の存在意義と重要性を感じること、他者が自分の幸せに関心と敬意を抱いていることを感じて他者に頼れるようになることである。

言いかえると、将来の成功と幸福は学生が大学内で自分は大切な存在だと感じる度合いと関連している。自分の価値を教えてくれる教授と出会っただろうか。学期をまたいで続くプロジェクトやインターンシップに参加して、自分の学びを使って価値を与えることができただろうか。