難関大に通っても通わなくても幸福度は変わらない

ランキングには訴求力がある。先行きが不透明な社会では、たとえ費用が高くついても、ランキング上位の大学で学位を得ることが給料の高い仕事につながり、それによって人生の満足度も高くなると信じたいものだ。だが大学に金を注ぎこめば、仕事における成功も大きくなるのだろうか。

ピュー研究所がまさにこの疑問を掘り下げている。大きな公立大学と学費の高い私立大学の卒業生を対象として、どういう人生を歩んだのか調査をおこなった。驚くべきことに、「統計的な差異は見出せない」という結果となった。どちらのグループも大多数において、家族生活、経済状況、仕事における個人の幸福度は同程度であった。

ポープもまた自らの報告書のなかで、超難関大学に通った学生とそうではない学生の卒業後の経過を追いかけた重要な研究をまとめている。彼女の研究でも超難関大学に通えば大きな成功を手にできるという証拠はほとんど見当たらなかった。だが、ひとつの重要な例外が指摘されている。疎外されてきた属性で、一族ではじめて大学に進学した上位校の学生は、それほど難関ではない大学の学生よりも高い給料を得る傾向がある。

この例外が生じた正確な理由については、研究者の見方は一致していない。ほとんどコネクションを持たない学生に対して、学校側が人脈を増やす機会を設けるからではないかという見方もあれば、収入の低い家庭から進学した学生には奨学金が与えられるので、借金をほとんど背負わずに卒業できるからではないかという見方もある。

大学の評判は「幸せ」とは関係ない

たとえランキングが疑わしく、将来における金銭面の利点がほとんどなくてもなお、名門大学に通うことが大きな幸せと喜びにつながるという信念にしがみつく親子もいるだろう。2014年、ギャラップ社とパデュー大学が協力して、大学の卒業生を対象とするアメリカ史上最大の調査に取り組んだ。3万人を超える卒業生の幸福度を測るため、鍵となる5つの重要な要素について調査した。

その要素とは、目的(どういう動機のもとで目標を達成するのか)、人間関係(力になる強い絆を持っているか)、身体(健康か)、財政(お金を適切に管理しているか)、コミュニティ(帰属感があるか)である。さらに仕事を楽しんでいるか、職場に成長を見守ってくれる相手がいるかという質問も加えて、仕事の充実度も調査した。

その結果、通った大学の評判──難関か並か、公立か私立か、小規模か大規模か──は「現在の幸福度や職業生活にはほとんど関係しない」とわかった。

家族が家の前で楽しそうに過ごす
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