大学関係者の相互評価と、卒業率の数値化でしかない

しかし、とポープは続ける。さまざまな指標は「恣意的に測定されたものであり、大学の質や学生が将来成功するかどうかを正確に示すものではない」

USニューズ誌がどのような基準でランキングを作成しているのかを知ると、親も子どもも驚くのではないだろうか。私も驚いたのだから。

大学ランキングの古い本
写真=iStock.com/MarkgrafAve
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2022年版を例に挙げると、ランキングの20パーセントは大学関係者の相互評価に基づいている。考えてみてほしい。何百ものほかの大学の内部事情を正確に把握している大学の管理者がどれくらい存在しているのか。すべての大学の毎年の変化を追えるのだろうか。不可能だ。追えるのはせいぜい大学の評判だけであろうから、そのようなランキングとは思いこみが現実になる自己成就的予言といえる。

ランキングの残りのうち22パーセントは、卒業と留年の割合に基づいている。ポープによると、高く評価されている私立大学では卒業率は概して95パーセントだが、大規模な公立大学では、学校によって異なるが、65パーセントから85パーセントのあいだに位置している。

だが卒業率を左右する最大の要因は、それぞれの学生の境遇であり(家庭が裕福な学生の割合など)、教育の質ではない。マルコム・グラッドウェルがニューヨーカー誌の記事で説明しているように、学校がどの階層の生徒を集めるかによって卒業率は変わってくる。

アメリカで最上流の家柄の生徒だけを入学させれば(イェール大学)、卒業率はぐんと高くなる。なるだけ多くの生徒を入学させれば(ペンシルベニア州立大学)、卒業率が低くなるのは避けられない。

1年で2位→18位に落ちたコロンビア大学

なかには順位を上げるためにデータを操作する大学も存在するため、ランキングはいっそう不確かなものになる。

コロンビア大学がUSニューズ誌に提供したデータが、「不正確で疑わしく、誤解を招く可能性が大きい」と同校の数学の教授によって指摘された件が話題を呼んだ。罰則として、USニューズ誌はコロンビア大学の順位を2位から18位に下げた。「全員が心に留めておくべき大事な教訓がある。USニューズ誌の運営がきわめてうさんくさいということと、ランキングが2位でも18位でも意味がないということだ」と内部告発した数学の教授は書いている。

「どんな教育研究機関であれ1年で2位から18位に下降するなど、ランキング自体が信頼できるものではないという証だ」。教育研究機関がランキング絡みのスキャンダルに巻きこまれるのは今回がはじめてではない。偽りや疑わしい情報を提供しているのはコロンビア大学だけではないだろう。