子どもの前で夫婦喧嘩をするとIQや記憶力が低下する
いつも夫婦が仲良くいられればいいですが、家事や育児の分担から親の介護などさまざまな課題に直面する中では、ときには夫婦喧嘩をすることもあると思います。ただ、子どもの前で激しい喧嘩をするのは避けたほうが良さそうです。
両親の激しい喧嘩を見聞きして育つと、子どもの脳は傷つき、IQや記憶力に悪影響があることがわかっています。18~25歳のアメリカ人男女を対象に、小児期に両親間のDVを長期間(平均4.1年間)にわたり目撃した22人と、そうした経験のない30人を比べたところ、DVを目撃したグループは脳の視覚野の容積が平均6.1%減少していました。大脳皮質の中でも、視覚に直接関係する部分が萎縮していたのです。視覚野が萎縮すると、他人の表情を読み取りにくくなり、対人関係でトラブルを抱えやすくなります。
実は、言葉のDVを目撃するほうが、身体的DVを目撃するよりも脳へのダメージが大きいのです。具体的には、視覚野の一部である舌状回の容積減少の割合が、身体的DVを目撃した場合は3.2%であったのに対し、言葉のDVを目撃した場合は19.8%にまでなっていました。言葉のDVが身体的DVの約6倍もの影響が見られたのです。
これは非常に驚くべき結果ではないでしょうか。多くの親が、子どもの前で配偶者を叩くなど暴力を振るうのは良くないとわかっていると思います。でも、怒りに任せて怒鳴ったり、ネチネチとしつこくなじったりする言葉の暴力が、これほどまでに子どもの脳に悪影響を与えるとは思っていないでしょう。もっと多くの方に知っていただきたい事実です。
性的マルトリで視覚的な記憶力が低下する
こんなことも性的マルトリにあたります(例えば、思春期に入る頃の子どもに親が入浴を強いる、子どもの前で親の下着姿や裸を見せるなど)。では、性的マルトリが子どもの脳へ与える影響はどのようなものでしょうか。小児期に性的マルトリを受けた経験のあるアメリカ人女子学生23人と、そういった経験のない女子学生14人を対象に脳を調べたところ、性的マルトリを受けたことのあるグループは、そうでないグループに比べ、左半球の「視覚野」の容積が8%減少していました。
視覚野は、単に目の前のものを見て認識するだけでなく、映像の記憶形成に関連する重要な領域です。ここが縮んでいるということは、「視覚的なメモリ容量が減少している」と考えられます。この調査では、視覚による記憶力を測定するテストも行いましたが、視覚野の容積が小さい人ほど、視覚的な記憶力が低いこともわかりました。性的マルトリを経験した人の脳は、メモリ容量を減少させることによって、苦痛を伴う記憶を脳内に長くとどめておかないようにしているのではないかと考えられるのです。



