国際的な分析によると、すべての国で男性は攻撃性が高い

攻撃性に関するメタ分析を紹介しましょう。この分析は欧米に加えてアジアの国々も含んだ分析です。身体的攻撃、言語的攻撃、関係性攻撃の性差について検討しています。

まず、身体的攻撃については、やはり男性のほうが女性よりも多いことが示されています。そして、この性差は分析に含まれた13の国すべてで見られており、興味深いことに、アジアにおいて、北米やヨーロッパよりも、性差が大きいことが示されました。

男性の胸ぐらをつかむ男性
写真=iStock.com/kaipong
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言語的攻撃についても性差が見られました。こちらについても男性のほうが多いことが示されています。ただ、身体的な攻撃に比べてその性差は小さく、すべての国で見られるわけではありませんでした。また、身体的な攻撃に比べて、言語的攻撃は北米やヨーロッパの性差が大きいことが示されました。

「いじめ」のような関係性攻撃には男女差がない

そして、興味深いのが関係性攻撃の結果です。女性のほうが多いと思われている関係性攻撃ですが、実はほとんど性差がないか、あっても非常に限られた条件においてのみだということが示されました。これは意外です。

地域別に見ても、北米とアジアでは女性のほうがわずかに多いものの、ヨーロッパでは男性のほうが多いという傾向が示されており、これらの結果は地域によって異なるというよりは、性差がほとんどないと解釈をしたほうがよさそうです。

子どもの研究については、関係性攻撃の性差が見られるのは10代のようです。大人で性差が見られないのは、そもそも身体的な攻撃をすると犯罪となり捕まってしまうので、研究の範囲内では男性であれ、女性であれ、関係性攻撃をする傾向が強くなるという事情もありそうです。

少なくとも身体的な攻撃性に関しては、男性のほうが強いことが示されました。では、なぜ、男性のほうが攻撃的なのでしょうか。ここでは、2つの考えについて簡単に紹介しましょう。

1つは進化的な説明です。激しい繁殖競争、つまりは子孫を残すためのパートナーを獲得するためには、より強い攻撃性を持つ男性が有利だったため、男性の身体的攻撃性が進化してきたという考え方です。この考えに従えば、攻撃性の性差は人類に共通して見られる特徴であることも想定されます。こういう説明では、男性ホルモンと攻撃性に関係があるという指摘もなされますが、両者の関係を否定する研究もあります。