提供する食事に辛口のソースをかけて攻撃性を測定する方法
攻撃性は、そもそもどのように調べられるでしょうか。一番手っ取り早い方法は、攻撃性の高さに関して色々と質問紙形式で尋ねるものです。当人に聞く方法もあれば、知人に聞く方法もあります。子どもの調査では、親や幼稚園・保育園の先生、学校の先生に尋ねることが多いです。
質問紙は一番ポピュラーな方法ですが、自分であっても、親であっても、客観的に攻撃性の高さを評価できるかどうかわからないという問題点があります。そのため、実際の行動を調べる方法もあります。たとえば、研究者が遊びの場面などを観察して攻撃行動を評価するようなやり方です。
筆者が面白いと思う方法に、辛口のソースを使う実験があります。皆さんが、気に入らない相手に食事を提供することになったとします。メニューはカレーで、その辛さは自分で調整できること、相手があまり辛いものを得意としていないことを知っているとします。その場合に、辛めのカレーを提供するか、甘めのカレーを提供するかで、その人の攻撃性の高さを調べるという方法です。実際の研究では、相手に提供される食事に辛口のソースをどれだけかけるかで攻撃性を測定します。
身体的な攻撃は男性、「仲間外れ」のような関係性攻撃は女性?
このような方法で調べる攻撃性は、いくつかに分類されることが知られています。性差の文脈で出てくるのは、直接的攻撃性と間接的攻撃性です。前者は身体的攻撃と言語的攻撃のことを指します。身体的攻撃は手が出るような攻撃性のこと、言語的攻撃は主に悪口や非難のようなもののことです。
間接的攻撃には関係性攻撃が含まれます。これは身体的な攻撃ではなく、社会的関係性を使った攻撃性で、無視や仲間外れのような方法で心理的にダメージを与える攻撃性です。
一般的なイメージとして、身体的な攻撃は男性、関係性攻撃は女性というイメージがあるでしょう。筆者自身は男性なので、まずもって男子が身体的な攻撃をしがちであることは否定できません。小学校でも中学校でも、自分も含めて殴り殴られ、という経験は一度や二度ではありませんでした。
一方、筆者には女性の攻撃性の実態がよくわかっていません。ただ、中学生のころ見た光景として、女子生徒は様々なグループをつくっていて、そのグループ間に若干の序列がありました。怖いなと思ったのは、あるグループに属していた女子生徒がそのグループから徐々に締め出されていき、気づいたときには別のグループに所属していたことです。元のグループの他のメンバーは特に気にすることもない様子を見て、寒気を覚えた記憶があります。
このようなケースは決して珍しいものではありませんが、一方で、同じような光景を男子グループの中で見たことも少なくないのです。女子も男子も仲間外れや無視をする光景に出くわすことはあります。これらの攻撃性に性差はあるのでしょうか。