「M-1 2024」の令和ロマンは憎たらしいほど完璧だった

そこからの行動も憎たらしいほど完璧だった。「M-1」で優勝した芸人には、多くのテレビ番組から出演オファーがかかる。しかし、くるまはテレビには出ないことを高らかに宣言して、徹底的に仕事を選んだ。

何でもかんでも出るという姿勢でいると、自分たちが出る必然性のない番組にも出ることになり、そこで活躍できずに悪い印象を残すことになってしまう。また、テレビに出まくることで顔を売ることができる一方、消費されて飽きられるのが早くなるというリスクもある。

また、テレビよりもライブや営業の仕事を重視することで、漫才師としての腕を磨きつつ、収入も確保するという意味もあった。連覇という目標達成のために、過度にテレビに出ないようにした。

注文住宅「PlusMe」発表会に登壇した令和ロマンの髙比良くるま(左)と松井ケムリ
写真=時事通信フォト
注文住宅「PlusMe」発表会に登壇した令和ロマンの髙比良くるま(左)と松井ケムリ(東京都渋谷区、2024年2月1日)

ボケのくるまは漫才の本を書き上げ、M-1用のネタを作った

実際には、令和ロマンが全くテレビに出ていなかったわけではない。ニホンモニターが発表した「2024ブレイクタレント一覧」によると、令和ロマンはこの1年で169本もの番組に出ている。レギュラー番組もあったし、お笑い色の強い番組には、むしろ積極的に顔を出していたように見える。テレビの仕事量も自分たちでコントロールしながら、連覇への歩みを着実に進めていた。

11月にはくるまの著書『漫才過剰考察』が出版された。漫才や「M-1」について、現時点での彼の考察をまとめた力作である。くるまはこの本を書き上げるまでに約9カ月を要したという。もとになる連載コラムの原稿に大幅に加筆する形でまとめられた本書は、これまでの芸人人生の総決算のような内容だった。

書籍の執筆を通して漫才について誰よりも考え抜いた彼は、それを書き上げた後の10月末に新しい漫才ネタを2本生み出した。それが決勝の舞台で披露する勝負ネタになった。