「おバカキャラ」を武器にしたバッテリィズに点数で抜かれる

そんな彼らの前に立ちはだかったのが、初めて決勝に進んだバッテリィズ。ボケ担当のエースの突き抜けた「おバカキャラ」を武器にした漫才は大爆笑を巻き起こし、ファーストラウンドでは令和ロマンを抜き去って暫定1位に躍り出た(合計861点)。

そして、バッテリィズ、令和ロマン、真空ジェシカ(決勝合計849点)の3組が雌雄を決する最終決戦を迎えた。真空ジェシカがアンジェラ・アキのライブを題材にした型破りな漫才で観客の度肝を抜いた後、令和ロマンが颯爽さっそうと現れた。

3組残った最終決戦ではバッテリィズより大きな笑いを取る

2本目に彼らが見せたのは、ツッコミ担当の松井ケムリが戦国時代にタイムスリップしてしまうというファンタジックな設定の漫才。くるまは複数の役柄を器用に演じ分けながら、物語を紡いでいった。4分間の漫才で1本の映画のような深い味わいがあった。

ラリー遠田『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)
ラリー遠田『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)

1本目の漫才が2人の間の会話だけで構成される「しゃべくり漫才」だったのに対して、2本目は2人が架空の設定に入っていく「コント漫才」だった。二種類のハイクオリティーな漫才を披露して、自分たちの芸の幅を見せつけた。

そんな令和ロマンは、バッテリィズと真空ジェシカの猛追を振り切り、最終決戦では9票中5票を獲得して優勝を果たした。レベルの高い戦いだったが、2本目の笑いの量で令和ロマンが一歩まさっていたのが勝因だったかもしれない。

彼らが連覇という前人未到の偉業を成し遂げることができたのは、1年かけてそれができる状況を整えてきたからだ。実力、戦略、そして運。すべてに恵まれた令和ロマンが、奇跡のような栄光をつかんだ。

ラリー 遠田(らりー・とおだ)
ライター、お笑い評論家

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、ライター、お笑い評論家として多方面で活動。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務める。主な著書に『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『逆襲する山里亮太 これからのお笑いをリードする7人の男たち』(双葉社)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など多数。