メニューを変えずに大幅な改装をすると借金だけ増える

私は銀行の紹介で、多くの飲食店の決算書を見てきました。その中で感じるのは、「メニューのリニューアルなしで大幅な改装をすると、借金だけが増える」ということです。

ここまで、お店全体のイメージを大きく変える要素を中心にお話ししました。しかし、大きくターゲット層を変えるといった方針でなければ、あまり多額の改装はおすすめしません。やるなら、古びている部分や、変えて効果が出ると思える部分を数十万円単位で改装するのが無難です。

例外は、居抜きで開業して、客単価(店格)と空間が合致していないような場合です。

これなら大幅な改装も考えられますが、条件は先ほどと同じで、メニューのリニューアルや、売りとなる新商品の販売がなければ効果は薄いです。

温度も店のイメージにつながる

⑤温度について。冬場の話をすると、日本海側のお店で感心するのは、開店直後から暖かいことです。寒い外から入ってホッとする経験を何度もしました。

同じ時期に、個室のある都会の居酒屋で、部屋に入ったときヒンヤリ感じたことも何度かあります。入店直後に与えるイメージは重要なので、改善の余地があります。

また秋口、忙しいお店の場合、働いている人にちょうどいいのかなと感じるほど寒いこともあります。これも検討の余地があるでしょう。

BGMの工夫

⑥音について、いくつか例をお話しします。

いつも女性客で満席になるカフェがあります。BGMがないので、女性の楽しそうな話し声であふれています。

このお店の社長に、なぜBGMがないのか聞いたところ、開店して客席が8割くらい埋まるまでは、大きな音でBGMを流しているそうです。その音につられてお客が大きな声で話しだしたらBGMを止めて、あとはお客の話し声が空間に響くようにしているそうです。

ある焼肉店では、80年代のJ-POPをBGMにしていました。土曜の夜に行ったのですが、客層は40代~50代、住宅街だったので知人と利用している近隣の住人が多いと感じました。肉を食べながら、まわりの会話を聞いていました。

「あれ、この曲、タイトルなんだっけ?」「あー、聞いたことある。誰だっけ?」「これ、学生時代によく聞いてたから知ってる。正解は!」などと会話が盛り上がっていました。

飲食業は、食事をする時間を提供する商売です。滞在時間にもよりますが、こうした工夫で楽しんでいただけたら、お金をかけずに付加価値が高まります。