満足要因には挙がらないが怒らせる理由になる

ここで振り返ると、一番よいお店の話のとき、「接客もすごくよくて」という声は聞こえましたが、接客のみを一番の理由に挙げた話は聞き取れませんでした。

この講師はうまいと思いました。大満足させる要因の一番に「接客」は挙がらないけど、怒らせる一番の理由は接客だと、痛感させたのです。

私も、接客が理由で行かないお店があります。逆に、接客が理由で通うお店もあります。

【図表】接客が生む影響
難波三郎『小さな飲食店のお客が減らない値上げ』(秀和システム)より

図表3をごらんください。

定食屋さんを5店舗経営している会社がありました。カウンター商売で、どのお店も商品は同じです。商品力は、かなり高いです(私の採点で80点)。

このうちの2店、AとBの接客には、違いがあります。

難波三郎『小さな飲食店のお客が減らない値上げ』(秀和システム) 
難波三郎『小さな飲食店のお客が減らない値上げ』(秀和システム) 

ここでクイズです。この差は、どんな影響を生みますか?

私が視察したところ、両店の味は、本部の味が保たれていました。

しかし、Googleマップや食べログの評価では、商品の項目まで差が出ていました。

人の感情は味覚に影響するのです。当然、リピート率が変わるので売上に差が出ます。

お客には、「(数ある店の中から、この店を選んでわざわざ)来てあげている」という気持ちが、少なからずありますから、お金を払った後(退店時)に気分が悪いと、「また来てあげよう」という気が薄れます。

逆に、「応援してあげよう」という気持ちがあるお客も、多々います。そういう人は、少し割高でも、顔を覚えてくれていることが伝わる接客をしてくれて、退店時に感謝を伝えられると、気分がいいのでまた来ます。

人の感情を動かす。それが接客です。

難波 三郎(なんば・さぶろう)
中小企業診断士(飲食店専門)

1967年生まれ。ながらくフリーターとして多くの店で修業した後、1999年に渋谷区で飲食店を開業。2006年に中小企業診断士の資格を取得し、『メニューが飲食店を救う!』(こう書房)を出版。希少なメニュー関連の本としてヒット。これを機に全国で活動するようになる。現在は出身地である岡山市に所在し、近隣県の商工会議所、銀行などから依頼を受けて中小・個人の飲食店を中心に利益増加のアドバイスを行う。同時に、週の半分は東京など都市部からの依頼を受けて全国で活動。年に約30社と向き合いながら、年に約50回のセミナーを開催している。日本調理製菓専門学校経営学非常勤講師。