「値上げは数回に分けて」が基本
③値上げは、一度でやらない
2023年ごろ多く見かけましたが、知名度のある老舗で、商品力や接客力も強いお店が一気に値上げをしていました。こういうお店は、長年かけて多くのお客を持っているので、一時的に客数が減っても戻りやすいです。
しかし、普通のお店だと、この方法は怖いです。「10年に1度」といった大胆な値上げではなく、インフレ時代(少しずつ物価が上がる時代)に合わせて、数回に分けて値上げするのが基本です。
このお店には商品の改善を含めた「QSCA」の改善を提案しましたが、すでにやる気が失せていたのか、耳を貸してもらえませんでした。QSCAとは、Q:品質(クオリティ)、S:接客(サービス)、C:清潔さ(クレンリネス)、A:雰囲気(アトモスフィア)を指し、お客が無意識に店を評価するときの基準です。
それから数カ月で閉店したそうです。
なぜそうなってしまったか?
ここまで読んでくださったあなたには、おわかりでしょう。
現場を見ず、お客の選択理由や満足度を考えず、帳簿上の数字だけで判断したからです。
こうならないためには、自信を持って値上げできるお店を作ることから始めるべきなのです。
すぐできる「C(清潔さ)」の改善
自信を持てるお店、つまり「今よりいい店にする」ためには、お客の満足度を高める必要があります。
そのために必要なのが、QSCAのレベルを高めることです。ここから、それをよくする方法についてお話しします。
最初はC(清潔さ)についてです。
私はふだん、お客の満足度について話すとき「QSA」という言葉を使っていて、Cを抜いて説明することが多いです。理由は、
①Googleマップや食べログの評価項目に、Cは入っていないから
②清潔なのは当然だから
③清潔さは、お客の満足度より、キッチンの衛生管理で使うことが多い言葉だから
などです。
ただ、清潔さは、QSAのうちA、つまり「内外装から感じる、お店のイメージ」とつながっています。
外装でいうと、汚れていると入店を敬遠される可能性があります。内装でいうと、汚れているために不満足度を高める可能性があります。
ネットの書き込みを確認する
まずGoogleマップなどの書き込みを読んでください。
それから、どの社長にもおすすめしているのですが、「このお店を知らない人になりきって、お店を見る」と、改善点が見つかりやすいです。
ただ、これは案外、難しいです。見慣れたものが「普通」で、何が悪いのかはわかりにくいのです。
以前、ある社長に、「店前のノボリとタペストリーが汚れていて、繁盛しているように見えない(初めての場合、入ろうと思いにくい)」と伝えたところ、キョトンとされたことがあります。
しかたないので、近所にあった牛丼チェーン店のノボリ(牛丼チェーンは、毎月フェアがあるので、いつも新しい)と、その近くのケーキ店のタペストリーを一緒に見に行ったところ、なんとなく理解してくださいました。