誤読を誘うリリースで「無実」と勘違いする人が続出

つまり松本人志は、一連の文春報道は「事実無根」などではなく、名誉毀損でもない、と認めたのだ。

プレスリリースには「被告らと協議等を重ね、訴訟を終結させることといたしました」とあるが、自分で起こした裁判なのだから、やめるもやめないも松本人志の一存である。最後まで続ければよいのに、日和ひよってやめてしまった。おそらく、このまま裁判の日を迎え、「敗訴」のニュースが出ることを避けたのだろう。

それを「終結」と表現するあさましさ。

著書に『遺書』と銘打った潔さは、もはやそこにはない。

松本は、この吉本興業のプレスリリース画面をスクリーンショットでXに投稿しており、それには2024年11月11日時点で33万「いいね」がついている。

彼を信じて待っていたファンは、喜びのあまりか、おそらく冒頭の単語をいくつか拾って早合点したのであろう、和解だ、文春に勝った、などと次々に投稿した。そのような投稿が増えることで、文春が負けたとか、被害女性と和解したとかいったデマが独り歩きする。だが決して「和解」などなされていない(裁判における「和解」は法律用語である)。

「御堂筋ランウェイ」に登場したダウンタウンの松本人志氏
「御堂筋ランウェイ」に登場したダウンタウンの松本人志氏(写真=nagi usano/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

おぞましい性加害は事実だったのか?

性加害で告発されたお笑いタレントが、事実無根だといって週刊誌を提訴し、判決が下る前に訴えを取り下げた。つまり松本は、一連の文春報道をもはや否定していないのだ。

その内容をかいつまんでふりかえってみよう。

松本は、「飲み会」と称して、スピードワゴン小沢一敬ら後輩芸人たちに一般女性を集めさせ、直前に場所をホテルに変更し、部屋から出られないようにし、性的行為を強要した、それも一度ならず常習的にやっていた、「飲み会」では後輩芸人が事前に女性たちのスマホを取り上げていた――これらが『週刊文春』に報じられはじめたのが2023年末のことだ。

2023年12月27日、吉本興業は即座に「当該事実は一切なく(中略)名誉を毀損するものです」とプレスリリースを出すが、のちにこれは誤りだとわかる。

松本は報道後も年末年始の正月特番等に出演を続けたが、年明けに状況が一転。

2024年1月8日、Xに「事実無根なので闘いまーす。それも含めワイドナショー出まーす」と投稿したまま、宣言した「ワイドナショー」には出演することなく、同日に吉本興業からプレスリリースが出て、活動休止に突入する。