トラウマによって生じた状態を心理療法で治療できる?
冒頭のJさんのように、ミスが多いなどで仕事がうまくいかない、人間関係がうまくいかないといったことを改善する方法はあるのでしょうか? もちろんありますので安心してください(発達障害かも? と思われるくらいにお困りの場合は専門家のケアを受けることが必要なケースが多いです)。トラウマをケアするために様々な心理療法が開発されています。
心理療法には、大きく2つのアプローチ方法があります。それはトップダウンとボトムアップです。
トップダウンとは、思考や認知からアプローチする方法です。理性の働きを取り戻し、情動を整え、記憶を処理していきます。代表的なものとして認知行動療法などがあります。
もう一つはボトムアップです。ボトムアップとは身体からアプローチする方法です。身体の活動を整えて、情動を落ち着かせ、記憶を処理していきます。ヨガ、マインドフルネス、ソマティック・エクスペリエンシングなどがあります。
過去のフラッシュバックに悩まされている場合も治療できる
過去の嫌な出来事のフラッシュバック(嫌なことが蘇ってきたり、反省をしたり、シミュレーションをしたり、など)でお困りの場合は、TSプロトコール、FAP療法など自分でも簡単に行える方法もあり、書籍も出版されていますので、そうした方法を試してみることも有効です。
セルフケアの手段として最も有効なのは、ヨガやウォーキングなどの有酸素運動です。私もクライアントには、週に2、3回30分程度歩くだけで良いので、有酸素運動をお勧めしています。
自分は発達障害かも? と捉えることは、つまりは「自分の悩みは治らない」と誤解してしまうということでもあります。
近年はトラウマについての臨床や研究は(発達障害についても)近年急速に進展しています。ぜひ、正しい知識に触れていただければと思います。
大阪生まれ、大阪大学文学部卒、大阪大学大学院文学研究科修士課程修了。在学時よりカウンセリングに携わる。大学院修了後、大手電機メーカー、応用社会心理学研究所、大阪心理教育センターを経て、ブリーフセラピーカウンセリング・センター(B.C.C.)を設立。トラウマ、愛着障害、吃音などのケアを専門にカウンセリングを提供している。雑誌、テレビなどメディア掲載・出演も多く、テレビドラマの制作協力(医療監修)も行なっている。著書に『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー携書)、『プロカウンセラーが教える 他人の言葉をスルーする技術』(フォレスト出版)がある。