複数の入試形式を組み合わせて合格を勝ち取る

概念だけだとわかりにくいので、少し具体例を見てみましょう。第一に、志望する大学の指定校枠がみなさんの高校にあれば、高い評定平均を目指し指定校型を目指すのです。

そこで不合格となってしまった場合には、2番目の戦略である総合型や公募型をねらいます。もともと指定校型で高い評定平均をねらっているはずですから、評定平均が条件となっている大学を探します。こうすることで、評定平均の高さを推薦入試の中で何度も活かすことができます。

残念ながら推薦で合格をもらうことができなかった場合、最後に一般入試に回ることになりますが、このように複数の入試形式を組み合わせて受験戦略を組むことで、どこかで確実に合格を勝ち取る。それが3層戦略です。

1、2、3と書かれた木製ブロック
写真=iStock.com/patpitchaya
※写真はイメージです

3層戦略には準備が必要

この3層戦略には注意すべきことがあります。それは、準備が必要だということです。複数の形式を使用する戦略ですから、当たり前かもしれません。

最優先である指定校型、またはそのリスクヘッジである総合型・公募型で必要となる評定平均は、早いタイミングから対策をしていくことになります。

学校の定期テスト対策は欠かすことができません。

小林尚・橋本尚記『提出書類・小論文・面接がこの1冊でぜんぶわかる ゼロから知りたい 総合型選抜・学校推薦型選抜』(かんき出版)
小林尚・橋本尚記『提出書類・小論文・面接がこの1冊でぜんぶわかる ゼロから知りたい 総合型選抜・学校推薦型選抜』(かんき出版)

さらに、総合型・公募型では英検を持っていないと出願が難しい(または不利になる)ため、そして一般入試に回る場合も英検は有利になるため、英検対策も第二の優先ポイントといえます。そして一般入試に回る可能性も考えて、一般的な受験勉強も進めておく必要があります。

もちろんすべてを完璧にやろうとすればオーバーワークになってしまいますから、優先度を決めて効果的に取り組んでいけば問題ありません。ただ、推薦入試が終わってから一般入試の勉強を始めたり、高校3年生になってから英検対策をしていたりするようでは、手遅れになってしまうのです。

リスクを回避する分、戦略的に受験対策をおこなう。すなわち、戦略にもとづきながら無駄な時間を減らして、早い時期からコツコツと対策を始める。これが3層戦略の本質です。

小林 尚(こばやし・しょう)
個別指導塾CASTDICE 塾長

高校受験で開成高等学校に入学し、東京大学文科一類に現役合格。卒業後、経営コンサルティング会社の戦略部門を経て、株式会社キャストダイスを設立。YouTubeチャンネル『CASTDICETV』では、受験情報にとどまらず職業・進路情報を高頻度で発信。著書は『やりたいことがわからない高校生のための最高の職業と進路が見つかるガイドブック』(KADOKAWA)など多数。

橋本 尚記(はしもと・なおき)
推薦入試専門推進塾 塾長

早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、塾講師・家庭教師の経験を経て、推進塾を設立。経済的に恵まれない生徒に対し中学校に出向いて学校授業の補講を行う「放課後塾」にも講師として参画。 YouTubeチャンネル『推進塾【推薦入試・総合型選抜専門】』にて、総合型選抜・学校推薦型選抜を中心に、受験情報や勉強法などの情報を発信している。