長丁場となる遷宮が避ける死の穢れ

神道には、死のけがれを嫌うという伝統がある。現代ではその是非が問われることにもなるが、式年遷宮を営むにあたっては、とくにそれを避けることがもっとも重要な注意事項になる。

これは、伊勢神宮に神職として奉職していた方から直接うかがった話である。伊勢神宮では、遷宮の作業がはじまる段階で、遷宮が行われる時点で万全の健康状態で臨めないと思われる神職は、その職を辞すことになるというのである。

来年からはじまる第63回の式年遷宮は、2033年に行われる。準備のはじめからそこまでで8年を要する。しかも、その時点では内宮と外宮、そして荒祭宮がたてかえられただけで、ほかの社殿の遷宮は終わっていない。それが終わるまでにはさらに約10年の歳月が必要である。相当の長丁場である。

私が話を聞いた神職の方は、健康に不安があったため、職を退いたという。面白いと思ったのは、泉涌寺せんにゅうじに移ったということである。泉涌寺は皇室の菩提寺で、なんと神職から僧侶に転出したのだ。

黒田清子氏の次は誰か

黒田氏は現在55歳であり、年齢的にはまだ若い。2033年の式年遷宮のときでも、64歳である。その点では、無事に祭主をつとめられる可能性は高い。

上皇明仁皇女、清子内親王
上皇明仁皇女、清子内親王(写真=在チェコ日本国大使館/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

しかし、その保障がないことも事実である。何らかの病いや事故により万全の態勢で臨めないこともある。となれば、臨時祭主をつとめられる人物が控えていなければ、式年遷宮の実施に支障をきたす危険性がある。

これも伊勢神宮の元神職の方が言っていたことだが、式年遷宮の儀式が行われるなかで、天皇からつかわされた勅使が急に具合が悪くなる出来事が起こったという。もしものことがあれば、式年遷宮に差し障りが生まれる事態である。幸い、着物を緩めると回復したということだが、伊勢神宮には相当な緊張が走ったらしいのだ。

では、黒田氏の次は誰になるのだろうか。