フィクサーの菅前総理は進次郎を見限って石破支持に
派閥政治の法則その2「派閥解消を言い出すと真の派閥抗争が激化」
岸田文雄前首相が「派閥解消」を言い出して、多くの派閥が解散した。表向きは。歴史を知る者からすれば、自民党の派閥解消など、「エクストリームスポーツ」。速さと過激さを競う競技だ。確かに表向きの派閥は解消したが、その間に「真の派閥」の形勢が進んだ。
派閥解消前は、領袖を通さずに他の派閥の議員に工作をかけると、仁義に反する。しかし、派閥が解散していれば遠慮はいらない。従来なら裏切りになることも、白昼堂々と行える。「派閥にとらわれず人物本位で投票する」とは、「表向きの派閥を裏切っても裏切りと言わせない」と同義だ。
そして、真の派閥の領袖となったのは、麻生太郎首相、菅義偉、岸田文雄の新旧首相たち。先行して「小泉推し」を宣言したのが菅前首相(当時)。菅前首相は小泉失速と見るや、石破支持に切り替えた。
他の2人は手の内を隠していたが、投票日前日に高市支持を表明したのが、麻生元首相。「1回目から高市に入れる」とまで言ったので、自派から出ている河野太郎デジタル大臣と支持者、それに上川陽子外相を推す人たちが離反して逆効果。
石破内閣に選ばれたのは「派閥」の論理で総裁選に貢献した人
そして当日になって岸田首相(当時)が、「決選では高市以外の1位の候補」と石破支持を明確にした。
何のことはない。麻生対菅のキングメーカー対決で、岸田がキャスティングボートを握ったまでだ。
他に、参議院茂木派を束ねてきた石井準一参院国対委員長と二階派事務総長だった武田良太元総務大臣も、一定数の票を石破候補に集めたので、石破内閣で主流派入りしている。
さらに、8人の小派閥の領袖ながら国対党務のベテランの森山裕総務会長は本音を明かさず、石破政権では要の幹事長。これで自民党が派閥を解消していると言えば、節穴だろう。
では、そもそも「政治改革」とは何か? そもそも、何をやれば政治改革なのかすら、誰も言えないではないか。
本当は「政治とカネ」など入り口にすぎない。「税金もらってんだから、ちゃんとしろ」で終わり。大事なことは、「日本国を地球上で文明国として生き残らせるか」を担う近代政党を最低でも2つ作ることが、政治改革ではないのか。
選挙をやるなら、選択肢が最低でも2つないと、意味がない。1つならファシズムで十分になってしまう。独裁党が腐敗しても、代わる選択肢がないので、ゼロと同じだ。
さて、今の日本に選択肢はいくつ?
1973年、香川県生まれ。中央大学大学院文学研究科日本史学専攻博士課程単位取得満期退学。在学中より国士舘大学に勤務、日本国憲法などを講じる。シンクタンク所長などをへて、現在に至る。『並べて学べば面白すぎる 世界史と日本史』(KADOKAWA)、『ウェストファリア体制』(PHP新書)、『13歳からの「くにまもり」』(扶桑社新書)など、著書多数。