「自分が絶対に選挙に落ちたくない」という自民党議員の保身

しかし、政権末期に支持率が下がると、「菅じゃ選挙に勝てない」と一斉に菅おろしが広がり、抗しきれずに退陣。とは言うものの、「別に選挙の相手の野党第一党が枝野幸男立憲民主党代表なら、わざわざ嫌われ者の河野太郎にしなくても構わない」と、岸田文雄当選となった。

自民党国会議員には絶対の原則がある。「自分が絶対に選挙に落ちたくない」である。この心理が多くの議員に伝播すると、雪崩現象が起きる。派閥の数など関係なく、いかなる総理大臣でも引きずりおろす。普段はどんなに大嫌いな奴でも、総理総裁に据える。そして一糸乱れず従う。

これが自民党の強さだ。

初閣議後、記念撮影に臨む石破茂首相(中央)と閣僚ら=2024年10月1日、首相官邸
写真提供=共同通信社
初閣議後、記念撮影に臨む石破茂首相(中央)と閣僚ら=2024年10月1日、首相官邸

小泉進次郎は総裁に選ばれてもおかしくなかったが…

こうしたことを考えれば、派閥政治はある程度は法則化できる。

派閥政治の法則その1「真・青木率」

参議院のドンと言われた青木幹雄元官房長官が語ったとされるのが「青木率」である。内閣支持率と与党支持率の合計が50を切れば、政権は危険水域とか。しかし、その2つは比例する。そもそも、竹下登や森喜朗の内閣は支持率が消費税5%より下になりそうだったが、危険水域どころか本人の気が済むまで居座った。本当に「青木率」と青木幹雄が言ったのか、疑っている。

それに対して私は「真・青木率」を唱えた。すなわち、

「総裁選の勝者=国民世論+党内世論」

である。これは政権の存続をはかる指標ともなる。国民世論と党内世論はかなりの率で矛盾するので、バランスが難しい。

これ、第1法則が国民世論で、第2法則が党内世論である。

今回、9人の候補が出馬した。しかし、有力候補は小泉進次郎・石破茂・高市早苗の3人。なぜなら、国民人気が高かったからだ。選挙の前に、特に今は国民世論が反映されやすい小選挙区制なので、国民人気が高い人しか総裁にはなれない。だから、早々とこの3人が抜け出した。

本来なら、小泉進次郎元環境相が抜け出しても、おかしくはなかった。ただ、目の前の総選挙を乗り切っても、来年は都議選と参議院選挙がある。「参議院選挙まで“小泉首相”がボロを出さないと思う人、手を挙げて」と問われると、来年改選の参議院議員を中心に沈黙が走る。総裁選の討論会で、小泉候補は既にボロを出していた。失速。

結果、高市・石破の2人が抜け出した。だが接戦。

ここで第2法則、発動である。

高市経済安保大臣も、石破元幹事長も、党内人気が高いとは言えない。では、どちらがより不人気かで決まる。その決定的要素が、派閥である。