個別銘柄を選ぶときのポイントは

実践の話に移りましょう。

投資信託を買うのもいいですが、前述の通り応援したい会社があれば、個別銘柄を買う選択肢もあります。個人投資家が個別銘柄を選ぶときの参考までに、私が仲間たちと16年前に立ち上げた、長期投資の運用会社「コモンズ投信」の選び方を紹介しましょう。

30年が象徴する、世代を超える価値創造を担う日本企業30社。当社では「コモンズ30ファンド」として、それら30社に投資しているアクティブファンドを運用しています。運用実績は15年ですが、設定来の年率リターンは12.77%。同期間のTOPIXの年率リターンは11.14%、日経平均225は11.48%ですから、インデックスファンドより高い実績を誇っています。この30社については、設定来、半分ほどが変わっていません。

投資対象の30社を選ぶときは、レイヤーで考えていきます。

まず「収益力」。会社が儲かっていること。これは当たり前のことですが、そこには「競争力」が必要です。競争力を高めるには、当然「経営力」があり、社内外の「対話力」が不可欠です。そのベースには、会社を支える「企業文化」がある。

この5つのレイヤーから、われわれ投資委員会で侃々諤々かんかんがくがくと意見を交わし、全員一致したら選択し、全員一致しないと選択しない。全員一致が条件です。このように合議制で進めています。ちなみに全員が一致するのは難しいものですが、世代を超える30年投資について、一人の目線だけに任せることはできません。

会社の価値を教えてくれるPBR

ただし「収益力」は氷山の一角です。その海面に見えているのは、数値化できる財務的な価値です。見える価値は過去の結果から出た数字で、もちろんそれも大事ですが、これから10年、20年、30年先のことを考えると、それだけでは不十分。競争力や経営力といった経過だけでなく、なかなか見えない根幹の価値に投資することが自分たちの役目だと思っています。

そのために大切にしているのが「対話」です。投資先企業がいかに価値創造をしているかを知るために、各企業との対話に時間を割いています。

これまでいろいろな会社と対話を重ねてやや残念に思うのは、「いいものを持っているのに生かし切れていない」会社です。

意思決定が遅い、あるいは会長のキモ入りプロジェクトだからおいそれとはいじれない……、そんな実例がありました。

個人投資家がそれを見抜くヒントに、PBR(株価純資産倍率)があります。PBRとは、企業の株価と純資産の比率を示す指標で、株式市場から見た企業価値の期待値への判断材料になります。つまりPBR=1.0ということは、資本市場から見て、その会社の価値は財務的な「見える価値」になります。悪くはありません。

「PBR」と書かれたニュースの見出し
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです

ただPBR=1.0以上なら、将来、高まる価値がある。要するに資本市場から見ると、見えない価値に対して評価があるということ。一方、PBRが1.0割れならば、その会社は見える価値を毀損きそんしているという評価です。

ですから個別銘柄を選ぶときにPBRに注目することは、見えない価値を見るための重要な判断指標になると知っておいてください。ただ、その企業が見えない価値を可視化できて、財務的な見える価値として可視化できる可能性が高まれば、PBR1.0割れは割安で買い材料になります。