社会に溶け込み普通に生きていたい
「カラーズ」の経験で、中村さんは結婚に、恋愛や性行為が必ずしも重要ではないことを強く感じる一方、相談者たちが「普通」に固執したい気持ちもよくわかる。
登録会員たちは皆、「一般社会に順応し、普通に生きていたい」と思っている人たちだ。となれば、「普通って、みんながしている恋愛結婚だよね」となってしまう。
「『LGBTQ理解増進法』などを見ていると多くの同性愛者が同性婚をしたいと思っているといった印象を持たれそうですが、多くの当事者がLGBTQ理解増進法については関心がないと言います。同性婚を認めてほしいと当事者全員が思っているわけではないし、当事者の悩みを理解できるわけがないからです。それよりも一般社会に順応し、普通に生きたいと思っているLGBTQの人たちに、友情結婚という選択肢もあると知ってほしいです」
何が、「普通」なのか。結婚がうまくいかなかったケースも、「普通の」結婚となんら変わらない。
「恋愛結婚の離婚理由の最多は、価値観の違い。いっとき恋愛マジックにかかって見えなくなっていたものが、見えてくるからです。友情結婚は恋愛ではないので、『価値観についてお互いにしっかり話し合ってください』と伝えます。そのために『話し合い冊子』を作っていますし、条件が合うか、感情的にならずに話ができるかなど、話し合い期間を大事に過ごしてくださいとお願いしています」
性行為にある3つの要素
友情結婚の「話し合い期間」とは、「交際」を意味する。話し合い期間をカラーズでは最も重要視するものだが、中には“超スピード婚”のケースもある。
「性行為のない相手と安心して出会えますし、成婚率が高いのも、狭いパイの中で同じ目的を持っているから。これまで交際経験がないと、波長が合ったからうまくいくと勢いで結婚して、同居したら違っていたと離婚に至るケースもありますし、同居して子どもを作ることが怖くなったというマリッジブルーのようなケースもあります。そこは一般の結婚と同じです」
性行為が要らない結婚を「普通に」見てきた中村さんは、結婚に必須とされる性行為には、「子作り、愛情、快楽」の3つの要素があると言う。
「この3つを一人の結婚相手で一生、全て賄うというのは難しいなーって思います。自分がそうですが、子どもを産むと女性って性欲が無くなりませんか? だから、性行為が初めからないのって、めっちゃ、楽じゃんって。性行為がないと寂しいと思う結婚ではなくて、性行為が存在しない異性と子どもを作るからこそ、子どもにより集中できる結婚ができる。成婚された方々を見ていると、とりわけそれを感じますね」